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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第37回『面影は共犯者』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、先月に続いて1985年の『火曜サスペンス劇場』作品より『面影は共犯者』をご紹介します。先月の『黄色いコートの女』は4月下旬の放送でしたが、『面影は共犯者』はその3ヶ月前、1月22日の放送でした。ちなみに、この年の『火サス』は1月1日の夜にも休まず放送されており、作品は『黒いドレスの女』。北方謙三先生の原作で、1987年に主演・原田知世で映画化された作品……ではなく、フランスの小説家であるジョゼフ・ケッセルの「恋路」(54年)を、小山内美江子先生が脚色した作品でした。主演女優は、大原麗子さん。その後、1月の主演は三田佳子さん、山本陽子さんと続き、4週目の本作が浜木綿子さんでした。浜さん×火サスの人気シリーズとして知られる『監察医・室生亜希子』がスタートするのは、1986年の暮れのことです(以降、2007年まで継続)。

『面影は共犯者』の原作は、夏樹静子先生。「小説現代」の1973年7月号で発表された作品で、後に読売新聞社から刊行された短編集「砂の殺意」(1974年10月発売)に収録されました。表題作である「砂の殺意」も、1981年に『木曜ゴールデンドラマ』にて映像化されています。

 

主婦・武原須美子(浜木綿子)と、夫である知之(江原真二郎)の夫婦関係は、いまや冷めきっていました。そもそも須美子が好きだったのは知之の弟で、カメラマンとして活動している俊彦(田村亮)だったのですが、知之が強引に須美子を奪ったのでした。それにもかかわらず、知之は家庭を顧みることなく、浮気を繰り返す日々。精神的に苦しんだ須美子は9年前、自殺を図ったのですが、俊彦によって助けられます。1年後、須美子は男の子を出産しましたが、それが知之でなく、俊彦の子であることを、須美子は分かっていました。時は流れ、その「秘密」を抱えながら、知之と暮らし続ける須美子。彼女はいまも、睡眠薬を常用していました。なぜなら、自分が殺される夢を、あまりにもよく見てしまうためでした。しかも、起きると、実際に首を絞められたような痕が残っているのです。須美子の身には多額の保険金もかけられており、夫が自分を殺そうとしているのではないかという彼女の疑念は、大きくなるばかりでした。

そんなある日、知之が出張することになりました。息子は、知之よりも遊び相手になってくれる俊彦のほうに懐いており、須美子の心の中で、「知之さえいなければ」という思いが次第に大きくなっていました。出張の詳しい行程を知之から聞いた須美子は、知之が常用している薬の中に、睡眠薬を混ぜることを思いつきます。車を運転中に知之が眠くなれば、その後で起こることは、予想がつきました。しかし、果たして須美子の狙い通りの結果が生まれるのでしょうか……?

やがて、知之は出張へ。そして、知之が睡眠薬を混ぜた薬を飲む「予定」となっていた日の翌日、箱根の警察署から、須美子宛てに電話がかかってきました。……やはり、「ご主人が亡くなりました」という、想像していた通りの連絡ではあったのですが、どうも、様子がおかしいのです。須美子が考えていたのと、知之の実際の死に方は違ったようで……。

いったい、出張中の知之に何が起こったのでしょうか? 一方、刑事たちは、須美子の言動にも、不審を抱いていき……。

 

と、いうわけで、須美子の「願い」は叶った反面、彼女が想定していなかった「何か」が起こったのは明白で、後半、物語はその謎に迫っていきます。殺人計画自体がうまくいった後で、その「綻び」が見つかって……というパターンはよくありますが、そういった類型的なプロットから微妙にズラしているところが、この原作の巧いところ。浜木綿子さんをはじめとする実力派のキャストが深みのある演技を見せ、視聴者による推理を一方向に絞らせないあたりも、本作の魅力だと言えるでしょう。

あらすじで紹介できなかったキャストとしては、知之の愛人・光子に高沢順子さん、俊彦を慕うスタイリスト・木崎よし子に三浦リカさん、事件を追う刑事に『西部警察』の井上昭文さん、『特別機動捜査隊』の和崎俊哉さんなど。須美子に睡眠薬を処方している医師を演じているのは、『機動戦士ガンダム』(79年)の主題歌「翔べ!ガンダム」の歌手としても有名な池田鴻さん(1988年、48歳の若さで逝去)でした。

それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう!

 

<3月の『Gメン’75』>

第21話~第30話を放送。第23話から、原田大二郎さんが演じる関屋警部補がしばらく欠場となりますが、それに伴い、他のレギュラー刑事たちにスポットが当たる機会も多くなり、第25話「助教授と女子大生殺人事件」は、初めて津坂刑事(岡本富士太)の単独主演回となりました。また、第27話と第30話では、北海道ロケが敢行されています。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年3月】

<放送日時>

『面影は共犯者』

3月4日(金)11:00~13:00

3月23日(水)22:00~24:00

 

『盗聴する女』(出演:浅野ゆう子/宮川一朗太/森次晃嗣/岡田茉莉子)

3月4日(金)13:00~15:00

3月18日(金)11:00~12:50

 

『花園の迷宮』(出演:斉藤由貴/杉本哲太/初井言榮/岡田茉莉子)

3月11日(金)11:00~13:00

 

『殺意』(出演:坂口良子/佐分利信)

3月2日(水)16:00~17:00

3月24日(木)11:00~12:00

 

『魔少年』(出演:松尾嘉代/森本レオ)

3月16日(水)16:00~17:00

3月25日(金)11:00~12:00

2022年2月24日 | カテゴリー: その他