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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY                                                                   第43回『瀬戸内海殺人事件』

先月(9月)はお休みしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。前回が「第42回」だったので、あらぬ想像をした方がいらっしゃるとか、いらっしゃらないとか……。何事もなかったように継続させていただきますので、よろしくお願いいたします。

さて、そんな今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1983年の『土曜ワイド劇場』より『瀬戸内海殺人事件』をご紹介します。原作は草野唯雄(そうの・ただお)先生で、作品は1964年に発表され、1972年に単行本化されました。

 

地質学の権威・重枝昌光教授(穂積隆信)は妻で画家の恒子(水野久美)と険悪な状態になっており、彼の愛情は、いまではお手伝いとして働いている宮本園江(池波志乃)に注がれていました。しかし、恒子は離婚に応じようとしません。そこで重枝はいつしか、恒子を殺害したいと考えるようになりました。

そのチャンスは、意外と早くやってきました。重枝家に仕事で出入りしている青年・和久秋房(原田大二郎)が、重枝に借金を申し込んできたのです。和久は誰にも言えない借金をしており、バレたら会社をクビになることは間違いないため、重枝を頼ったのでした。重枝にとって、この話は好都合。金を工面してやる代わりに、自らが立案した「殺人計画」に、和久をむりやり誘いました。和久と、愛人の園江。この2人に妻の恒子を殺害させて、自分には完全なアリバイを作っておく、というものです。園江は当初、抵抗していましたが、結局、重枝の指示通りに動くことを了承。こうして、ひとつの犯罪が動き出しました。

重枝の計画は周到でした。恒子は、実際には東京で殺され、死体を埋められたのですが、園江が恒子になりすまして行動することで、「恒子は海に身を投げて自殺した」ということになったのです。もちろん、存在するのは状況証拠だけで、海から恒子の死体が発見されることはありません。しかし、恒子は行方不明となっているわけで、これでほぼ、恒子の自殺は成立するのです。あとは重枝、和久、園江が口裏を合わせれば、「完全犯罪」も目前でした。

そんなとき、恒子の自殺に異議を唱える人物が現れました。恒子の妹で、フリーカメラマンをしている尾形明美(浅茅陽子)です。姉の性格をよく知る明美にとって、自殺は考えられませんでした。しかも明美は、重枝家にもよく出入りしており、最近、夫婦仲がうまくいっていないことも知っていました。重枝が姉を殺したのではないか、と直感的に疑った明美は、重枝を介して知り合っていた和久に、真相を究明するために協力してほしいと依頼します。まさか、和久も共犯者だったなどとは、このときの明美には、知る由もありませんでした。

和久は断るわけにもいかず、慎重を期しながら、明美と行動をともにしました。少なくとも重枝には、鉄壁のアリバイがあるのです。いずれ明美も諦めるはず、と思っていた和久でしたが、姉への思いが強い明美は、この事件の不審な点をどんどん指摘していきます。このままでは、完全犯罪に危険信号が!?

ところが、事件に関連して、新たな殺人が起こり……。

 

本作の製作は、テレビ朝日ではなく、朝日放送が担当。四国ロケを敢行し、スケール豊かな推理劇が展開されました。

中盤までの焦点は、真相を隠したい犯人グループ側と、真相を突き止めたい主人公・明美のやりとりです。和久を原田大二郎さんが爽やかに演じていることもあり、途中から観た人などは、明美と和久がコンビで犯人を捜す話のように勘違いするかもしれません。

しかし、本作では後半にあっと驚く「どんでん返し」が待ち受けています。前半、ある一連のシーンで実に巧い演出がなされており、筆者などは、それに見事にダマされてしまいました。ある意味では「禁じ手」と言えるかもしれない展開ですが、映像作品での推理劇の特性が活かされており、決して「ルール違反」ではありません。おそらく、勘の良い方は、ダマされず、劇中の登場人物たちより少々早く、絶妙な「からくり」に気づくのではないでしょうか。とにかく、先のあらすじに記した「新たな殺人」のところまで、ご覧いただければと思います。そこまでを観たら、ラストを確認せざるを得なくなるはずなので。

 

監督は当時、2時間ドラマを中心としつつ、『特捜最前線』にも参加していた松尾昭典さん。日活の黄金時代を支えた手腕は、テレビドラマの世界でも健在でした。本作の翌月には同じ『土曜ワイド劇場』で、森村誠一先生が原作の『高層の死角』を担当(1983年4月30日放送)。さらに同年の8月には、本作と同じ原作者、脚本家(高橋稔さん)、音楽担当(三枝成章さん)、主演という布陣で『ハイミス探偵日記』も手がけています。本作と共通の出演者には他に下川辰平さん、湖条千秋さんがいました。

また、本作には林健樹さん、香野麻里さんも出演されていますが、ご両名は同時期、『科学戦隊ダイナマン』にレギュラー出演。番組の最終盤まで活躍する悪役を好演しました。本作と『ダイナマン』はいずれも、東映の阿部征司プロデューサーが担当しているため、そのつながりでのキャスティングだったと思われます。

……それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

<10月の『Gメン’75』>

10月が初回放送となるエピソードは、第83話から第90話。第85話「’77元旦デカ部屋ぶっ飛ぶ!」は、1977年の元日に放送された、深作欣二監督作品です。また、第86話から第88話は、ヨーロッパ・ロケ三部作。時効が成立した三億円事件の真相を突き止めるためGメンがパリへと飛びます。川津祐介さん、范文雀さん、中島ゆたかさん、西田健さんといった『Gメン’75』おなじみのゲスト陣が熱演! ぜひ、ご期待ください。

そして『ピンスポ!』では、津坂刑事を演じた岡本富士太さんが登場。『Gメン’75』の秘話をたっぷりを語っていただきましたので、こちらもお見逃しなく!

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年10月】

<放送日時>

『瀬戸内海殺人事件』

10月8日(土)18:00~19:50

10月21日(金)11:00~13:00

10月31日(月)24:00~26:00

 

『花柳幻舟獄中記Ⅱ』(監督:森崎東/主演:花柳幻舟)

10月23日(日)23:00~25:00

 

『華やかな死体』(監督:池広一夫/主演:竹脇無我)

10月11日(火)22:00~23:50

10月21日(金)13:00~15:00

2022年9月20日 | カテゴリー: その他
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第42回『悪霊の棲む館』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、先月と同じく1980年の『木曜ゴールデンドラマ』作品より、『悪霊の棲む館』をご紹介します。本作が放送されたのは8月21日。タイトルからもおわかりのように、夏の怪奇編として企画されました。ちなみに、前週の8月14日に放送されたのは『さすらいの甲子園』。企画・岡田晋吉さん、プロデュース・中村良男さん、脚本・鎌田敏夫さん、監督・斎藤光正さん、主演・中村雅俊さんと、名作ドラマ『俺たちの旅』(75年)の布陣で製作されました。共演は夏目雅子さんをはじめとして、柴田恭兵さん、高橋悦史さんほか。この作品とは違う意味での「夏らしさ」を目指したのが『悪霊の棲む館』でした。さて、どんなお話かと言いますと……。

 

28歳の尾形彩子(夏純子)は、深夜のラジオ番組のDJとして、高い人気を誇っていました。プライベートでは、番組ディレクターの天間(村野武範)と交際していましたが、仕事が充実している彩子は、まだ結婚などは考えていないようでした。

それは、彩子の過去にも関係があったのかもしれません。彩子は6年前、ある劇団の研究生として、女優を目指していました。そのころ、彩子が交際していたのは、同じ劇団にいた山崎一男(岸部一徳)という青年でしたが、山崎はある日、別の女性と心中。彩子のお腹には山崎の子どもがいましたが、彼女は堕胎手術を受けたのでした。

さらに遡れば、彩子は幼いころ、母(月丘千秋)に殺されかけたことがありました。父が事業に失敗して自殺したことを原因とした、母の衝動的な行為でした。

幸せからは程遠い人生を歩んできた彩子にとって、DJとしての人気は、成功への第一歩でした。しかし、そんなある日、彩子は番組宛てに届いた葉書の山の中に、幼い子どもの字で書かれた、奇妙な葉書が1枚あるのを発見しました。5~6歳くらいの子どもが書いたと思われる文面でしたが、彩子のことを「お母さん」と呼んでいます。まさか、堕胎したはずの子どもからの手紙……!? ひた隠しにしている過去の出来事ゆえ、知っている人は少ないはずなのに、いったいなぜ、こんな葉書が届いたのでしょうか。彩子は、この葉書を手にした日から、精神が不安定となり、仕事でも失敗が続いてしまいます。さらに、同じ子どもが書いたと思われる葉書が、またも届きました。そこにはなんと、自分の父親は「山崎一男」だと書かれていました。錯乱して倒れた彩子。彼女は休暇をとることになりました。

静養先に選んだのは、天間の別荘でした。束の間、仕事のことを忘れて楽しく過ごす彩子でしたが、天間が一日だけ、仕事で東京へ戻ることに。彩子の心に、不安がよぎります。そして、天間が不在になった途端、彩子の身の周りには、不可解にして奇妙な出来事が起こり続けるのでした。それは彩子の幻覚なのでしょうか? あるいは、何者かが彩子を狙っているのでしょうか!? 彩子はひたすら、天間の帰りを待ちましたが……。

 

……というわけで、ひとりの女性が恐怖によって破滅に近い状況にまで陥っていく姿を夏純子さんが熱演しています。夏さんといえば、1970年代を駆け抜けた人気女優。ジャンルを問わない活躍を見せ、幅広いファンを獲得していました。もし80年代も女優を続けていれば、特に2時間ドラマ全盛の時代にはトップスターに君臨していたのではないかと思いますが、残念ながら、1981年に結婚して引退されました。本作はキャリア末期の作品にあたりますが、この1年後に引退されるなんて、実に惜しい!とあらためて痛感します。

あらすじに登場しなかったキャストとしては、恐怖に怯えた彩子を助ける初老の男性・宮本に大滝秀治さん、その友人の医師に早川雄三さん。こんなところで、『特捜最前線』の船村刑事と、『特別機動捜査隊』の松木部長刑事が共演していました。2人が将棋に興じるシーンがあるのですが、これは大滝さんがプライベートで将棋が趣味だったため、演出に採り入れられたのではないかと思われます。

このほか、まだ当時、子役としてデビューしたばかりで、現在も女優として活躍中の長谷川真弓さんが、印象的な役柄で出演。ここでは役柄を敢えて書きませんが、あらすじをよく読んでいただければ、もしかしたら想像がつくかも……!?

 

監督は近年も水谷豊主演『無用庵隠居奉行』シリーズなどを手がけている吉川一義さん。1980年は他に意外なところで『電子戦隊デンジマン』にも「よしかわいちぎ」名義で参加されていました。脚本の「相里修」は、『特捜最前線』で脚本や監督を務めた藤井邦夫さんのペンネーム。東映側のプロデューサーにも、後に『特捜最前線』を担当される武居勝彦さんが名を連ねています。武居さん、藤井さん、大滝さんと来ると、大滝さんが演じる初老の男性・宮本の「正体」が気になってきますが……これもまた、観てのお楽しみということにしておきましょう。

物語は後半まで、かなりインパクトのあるビジュアルが続きますが、終盤の畳みかけるような展開に、ご期待ください。昭和の「テレビ映画」が好きな方には、「こんな作品もあったのか!」と、きっと喜んでいただけるだろうと思っております。

……それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう!

 

<8月の『Gメン’75』>

8月が初回放送となるエピソードは、第65話から第72話。第65話「真夏の夜の連続女性殺人事件」などは、初回放送時も夏でしたし、この時期に観るにはぴったりです。ぜひ、ご期待ください!

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年7月】

<放送日時>

『悪霊の棲む館』

8月2日(火)13:00~15:00

8月13日(土)11:00~13:00

8月26日(金)11:00~12:50

 

『大東京四谷怪談』(出演:鰐淵晴子、中島ゆたか、三橋達也)

8月1日(月)23:00~24:30

8月12日(金)11:00~12:30

8月25日(木)13:30~15:00

 

『ステレオ殺人事件』(主演:秋吉久美子)

8月5日(金)11:00~12:00

8月13日(土)5:00~6:00

8月22日(月)14:00~15:00

 

『妻よ安らかに眠れ』(脚本:山田正弘/主演:愛川欽也)

8月5日(金)12:00~13:00

8月16日(火)24:00~25:00

8月27日(土)5:00~6:00

 

『十万分の一の偶然』(監督:藤田明二/出演:田村正和、中谷美紀、岸本加世子)

8月1日(月)13:00~15:00

8月19日(金)11:00~13:00

2022年8月1日 | カテゴリー: その他
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第41回『羆嵐』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1980年の『木曜ゴールデンドラマ』作品より、『人喰熊 史上最大の惨劇 羆嵐』をご紹介します。本作は吉村昭先生による小説『羆嵐』(77年)を映像化したもので、かつて北海道苫前郡苫前村三毛別六線沢で実際に起こった、「三毛別羆事件」がベースとなっています。その「三毛別羆事件」とは……。

 

時は、1915年(大正4年)。北海道の開拓時代。悲劇の舞台は、開拓部落である六線沢でした。最初に羆(ヒグマ)の存在が確認されたのは11月のことでしたが、その時点では、具体的な対策は講じられませんでした。そして12月9日、ついに羆による被害者(2名)が出ます。最悪の事態が生じたのは、翌日の12月10日のことでした。さらなる被害者は5名。ここから本格的な対策が打たれ始めたものの、羆の動きを捉えることは容易ではなく、組織された討伐隊も苦戦を強いられます。さまざまな予想外のアクシデントが続く中、討伐隊とは別行動をとっていたひとりの猟師が羆を射殺したのは、12月14日。この日から現地を襲った激しい吹雪は「羆風」もしくは「羆嵐」と呼ばれ、語り継がれたのでした。

小説『羆嵐』も、またテレビドラマ版『羆嵐』も、フィクション作品とはいえ、史実の重要な部分はしっかり押さえられたものとなっていますが、より正確な事実に興味のある方には1994年に発表された書籍『慟哭の谷 戦慄のドキュメント 苫前三毛別の人食い熊』をオススメします。

 

というわけで、今回は作品の特質を考え、従来のような「あらすじ紹介」は省かせていただきました。ドラマ『羆嵐』は、一連の事件をドキュメンタリータッチで描いていきます。この種の作品の場合、羆(熊)をどう表現するかという部分が重要となってくるのですが、本作は絶妙な編集やカメラワークを駆使して、狂暴なる羆の怖ろしさを見事に描きました。羆による被害者が出る「12月9日」と「12月10日」のシーンは、当時のテレビとしてもぎりぎりの凄惨さ。しかし、この一連があるからこそ、後半における「大自然を前にしたときの人間の無力さ、愚かさ」というテーマが活きてくるのです。本作のような題材を、テレビドラマとして放送していた時代が確かに存在した、ということが今回の放送で広い層に伝わってくれれば、と思っています。

主人公の猟師・山岡銀四郎を演じたのは三國連太郎さん。熊を仕留める実力は随一であるにもかかわらず、その性格ゆえに周囲から敬遠されている銀四郎は、三國さんが演じたことで、絶大な存在感を得ました。このほか、開拓民たちの期待を背負って現地入りする分署長を演じた石橋蓮司さんも適役。初登場シーンからして、「この人は大したことないんだろうなぁ」と思わせてくれます。羆に身内が殺されたことで、開拓民たちの中でも羆に対して猛烈な敵意を燃やす人物を演じているのは森田健作さん、前田吟さん。このほか、安定した演技力の大坂志郎さん、小林稔侍さんらが脇を固めました。冒頭のラストの「語り」は、当時『まんが日本昔ばなし』でもおなじみだった常田富士男さんが担当しています。

 

監督は、1978年に『冬の華』、1979年に『日本の黒幕(フィクサー)』を発表していた降旗康男さん。面白いことに、『羆嵐』のラジオドラマ版では、脚本に倉本聰さん、主演に高倉健さんと、『冬の華』で降旗監督とコンビを組んだ2人が参加していました。1981年にも倉本さん、降旗監督、高倉健さんで『駅 STATION』が公開されていることを考えると、世が世なら『羆嵐』がこのトリオで映画化されることもあり得たのかもしれません。

東映からは秋田亨さん、三堀篤さん、七条(七條)敬三さんという3名のプロデューサーが参加。よみうりテレビ側は池頭俊孝さんが担当されました。池頭さんと七条さんの名前の並びに既視感があったのですが、おふたりはまだ「制作担当」という肩書きだった時代に、『超人バロム・1』(72年)に参加されていたんですね。七条さんは後に東映動画(現:東映アニメーション)へ異動。1981年には『Dr.スランプ アラレちゃん』の企画者としてクレジットされているので、『羆嵐』は東映所属時代の最後の作品だったかもしれません。

そして三堀さんは東映の劇場作品の監督として『非情学園ワル』シリーズ(73~74年)や『太陽の恋人 アグネス・ラム』(76年)などを手がけた後、企画者に転じて、1979年には家城プロの製作、東映の配給で『わが青春のイレブン』を製作(脚本は家城巳代治さん)。この作品の監督が降旗さんでした。1980年代に入っても三堀さんは『ひとひらの雪』(85年)、『化身』(86年)、『桜の樹の下で』(89年)などの話題作を企画しています。

 

本作は、序盤の凄惨な「人喰い」シーン、メインとなる「羆と人間の対決」シーンもさることながら、銀四郎が羆を射殺した後の「エピローグ」も見どころです。銀四郎と他の登場人物たちの「相容れない」雰囲気は、本作が視聴者に訴えたかったテーマを感じさせてくれます。人間は、日本人は……この事件から何を学ぶべきなのでしょうか。

……それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう!

 

<7月の『Gメン’75』>

7月が初回放送となるエピソードは、第57話から第64話。注目はなんといっても、第59話から第61話までの「沖縄ロケ三部作」です。当時、放送された時期もちょうど7月だったので、この時期に観るには、まさにうってつけ。内容はどこまでもヘビーですが、『羆嵐』と同様、「テレビドラマはここまでやれるのか」と思わせてくれる名作です。ぜひ、ご期待ください。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年7月】

<放送日時>

『羆嵐』

7月1日(金)11:00~13:00

7月14日(木)22:00~23:50

7月22日(金)11:00~13:00

 

『極刑』(主演:草笛光子)

7月15日(金)11:00~13:00

7月29日(金)11:00~13:00

 

『傑作推理劇場 死ぬより辛い』(脚本:池田悦子/監督:佐藤肇/主演:秋野暢子)

7月8日(金)11:00~12:00

7月19日(火)5:00~6:00

 

『傑作推理劇場 ラスト・チャンス』(脚本:松田寛夫/監督:小澤啓一/主演:原田芳雄)

7月8日(金)12:00~13:00

7月16日(土)13:00~14:00

2022年7月1日 | カテゴリー: その他
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY                              第40回『悪魔が忍び込む』

今月で第40回を数えた「東映テレビドラマLEGACY」。今後もご愛読のほど、よろしくお願いします。さて、今回ご紹介するのは1985年の『火曜サスペンス劇場』作品より、『悪魔が忍び込む』です。放送日は7月2日で、この回より、エンディング・テーマが1年ぶりにリニューアルされ、3代目の「橋」から4代目の「25時の愛の歌」へと代わりました。『火サス』のエンディング曲は1981年の番組スタートから1987年の秋まで、6年間にわたって岩崎宏美が歌唱を担当。「25時の愛の歌」は、初代の「聖母(マドンナ)たちのララバイ」に続いて長く使用された曲なので、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。ちなみに、1985年7月当時の『火サス』の裏番組にはフジテレビ『なるほど!ザ・ワールド』のほか、TBS『サーティーン・ボーイ』(主演:岡本健一)、テレビ朝日『ただいま絶好調!』(主演:舘ひろし)などがありました。

 

看護師として働いていた佐藤すみ子(浜木綿子)は、最初の結婚で長女・しのぶ(早川美也子)を産みましたが、夫と死別。女手ひとつで娘を育てていくため、クラブで働くようになりました。あるとき、すみ子は店長の冬木(睦五郎)から再婚の話を持ちかけられます。相手は、大手企業で部長を務める岩渕勝(伊東四朗)でした。岩渕は、すみ子に一目惚れ。しのぶという娘がいることも承知で、彼女との結婚を望んでいました。やがて、すみ子は勝の母・チカ(清川虹子)とも会い、岩渕との結婚と、チカと勝が暮らす家での同居を決断します。しのぶも、すでに小学生になっていました。

ところが、ある時期を境に、チカは急に、すみ子やしのぶに冷たくあたるようになりました。老人会でチカと仲良くしている吉川(浅香光代)という女性からも、すみ子は嫌味を言われる始末。どうやらチカは、あることないこと、老人会で仲間たちに吹聴しているようでした。なぜ、チカの態度が急変したのか? その時点では、すみ子には全くわかりませんでした。義母や自分をいじめるチカへの嫌悪感から、しのぶはチカに対し、激しく反抗するようになります。しかし、その程度のことで、チカが怯むことはありませんでした。

ただし、チカは持病を抱えていました。狭心症です。すみ子がチカを病院へ連れて行ったところ、武内医師(横光克彦)は2種類の薬を出してくれました。武内は、すみ子が元・看護師だと聞き、「力強い味方がいる」とチカを励ましますが、そんなことで、チカのすみ子に対する感情は変わりません。むしろチカは、自分がすみ子に殺されるかもしれない、などと人聞きの悪いことを遠慮なく、言い出すようになっていきます。

そしてまた、ある日のこと。チカは、しのぶの反抗的な態度に腹を立て、そのために狭心症の発作を起こしました。すみ子が外出していたこともあり、チカは自分で急いで薬を探しますが、なぜか、置いてあるはずの場所に薬が見つからず……!

 

というわけで、ここまで読んでいただいた方は、この作品に「嫁・姑の関係を軸にしたサスペンス」といった印象を抱かれたことでしょう。それ自体に間違いはありません。「嫁」であるすみ子に対して、これでもかと悪態をつくチカ。清川虹子さんの、「一般視聴者に嫌われても構わない」と言わんばかりの熱演ぶりが光ります。当時、すでに70歳を過ぎていたとはいえ、本作の2年前に映画『楢山節考』に出演するなど、第一線で活躍を続けていた清川さんに加え、劇中のチカの「援軍」として、剣劇女優として知られた浅香光代さん(老女・吉川役)も参戦しているのですから、すみ子も分が悪そうです。ひたすら耐え続ける、すみ子。彼女にとって最大の味方は娘のしのぶであり、また夫の岩渕勝であるはずなのですが、しのぶの態度が母・チカを苦しめている一因になっていると考えた勝はやがて、しのぶに対しても疑念を持つようになり、すみ子と勝の間にも、深い溝が……。

 

そんな本作ですが、前半で張られていた伏線が、後半で見事に回収されていきます。密度的には、後半は前半の倍くらいのイメージ。チカのすみ子に対する態度が急に変わった原因は何か? 大事な薬の置き場所は、どうして変わっていたのか? そして、それは「誰」が変えたのか? さまざまな謎が明らかになっていくのと並行して、憎しみが支配していた物語の中から「愛」が見えてくるという構造が秀逸で、「嫁・姑の話は苦手だな……」という方にも、ぜひご覧いただきたい作品となっています。もちろん、タイトルに「悪魔」と入っているように、人間の<悪意>もポイントなので、随所で発見できる<悪意>の巧みな描かれ方にも、ご注目ください。

最後に、例によって、ストーリー紹介部分で触れられなかった、他のキャストについて紹介しておきましょう。勝の兄で、チカとの同居を拒否していた岩渕修を演じたのは、穂積隆信さん。老人会「憩いの家」における長老格の老人を演じたのは、当時87歳の佐々木孝丸さんでした。資料によれば、本作が長いキャリアにおける最後の作品である可能性が高そうです。後半、重要な「証言者」として登場する堀川朋子を演じたのは、1980年代の時代劇や刑事ドラマでは欠かせない存在だった佐藤万理さん。しのぶが通う小学校の用務員は相馬剛三さんが演じています。

……それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう!

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

<6月の『Gメン’75』>

6月が初回放送となるエピソードは、第47話から第56話。第47話「終バスの女子高校生殺人事件」は、ラストで明かされる事件の「真相」に衝撃を受けること間違いナシの傑作回です。その他にも第49話「土曜日21時のトリック」や、第56話「魚の眼の恐怖」など必見回が続々登場。ぜひ、ご期待ください。

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年6月】

<放送日時>

『悪魔が忍び込む』

6月3日(金)11:00~12:50

6月14日(火)21:30~23:30

6月27日(月)21:30~23:30

 

『女が見ていた』(監督:鷹森立一/主演:泉ピン子)

6月2日(木)13:00~15:00

6月10日(金)11:00~13:00

6月23日(木)22:00~24:00

 

『異人館の遺言書』(原作:和久峻三/出演:フランキー堺、春川ますみほか)

6月16日(木)11:00~12:00

6月24日(金)11:00~12:00

 

『暗い穴の底で』(原作:菊村到/脚本:長坂秀佳/監督:天野利彦/主演:近藤正臣)

6月17日(金)11:00~12:00

6月24日(金)12:00~13:00

2022年5月31日 | カテゴリー: その他
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY                                                                          第39回『奥多摩殺人渓谷』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1982年の『土曜ワイド劇場』作品より『奥多摩殺人渓谷』をご紹介します。本作の原作は、山岳推理小説で人気のあった太田蘭三先生です。1978年に刊行された「殺意の三面峡谷 渓流釣り殺人事件」が翌年、『土曜ワイド劇場』にて映像化。主人公の釣部(つるべ)渓三郎を緒形拳さん、ヒロインの女子大生・上條アキを、当時20歳だった池上季実子さんが演じました。すでに東映チャンネルにて放送されたので、ご覧になった方も多いでしょう。

『奥多摩殺人渓谷』は、その直接の続編にあたります。第2作まで3年という長い時間が空いたものの、緒形拳さんと池上季実子さんの「再共演」が実現しました。当時、緒形さんは主演映画『野獣刑事』が公開されたばかり。『火曜サスペンス劇場』で長く続いた『名無しの探偵』シリーズのスタートも、この年でした。一方の池上さんは、前作の放送と同時期に公開された『太陽を盗んだ男』以降、映画の出演についてはブランクがあったものの、テレビドラマで大活躍。このコンビは翌年(1983年)の映画『陽暉楼』において、女衒と芸妓の父娘という形でまたまた共演を果たすのですが、『土ワイ』の「釣部」と「アキちゃん」としては、「年の離れたカップル」を、実に爽やかに演じています。

 

前作のラストで渡米した上條アキは、帰国して早々、奥多摩へ山登りに出かけました。しかし運悪く、そこで男性の死体を発見してしまいます。アキは、すぐに警察へ連絡。亡くなった男性は釣り人らしく、落石事故に巻き込まれたものと思われました。死体のそばには、魚籠(釣った魚を入れる容器)が転がっていましたが、魚籠の中に入っていた魚については梅林刑事(穂積隆信)が「ヤマメだ」と言う一方、今西巡査(相馬剛三)は「アマゴです」と主張。このやりとりを聞いたアキは、事件の真相を突き止めるためにも、釣部渓三郎という推理作家に意見を求めたほうが良いと提案します。どうやらアキは、何かの理由をつけて釣部と久しぶりに会いたかったようです。前回の事件にも関わった人物で、釣部とは友達付き合いをしている北多摩署の「サワさん」こと大沢警部(大坂志郎)が、釣部に連絡。釣部はアキと再会を果たしますが、会った途端に釣部とアキは大喧嘩をしてしまいました。機嫌を損ねて、ひとりでさっさと帰ってしまうアキ。釣部は、アキの複雑な心理がつかめず、戸惑うばかりでした。

そんな釣部でしたが、「ヤマメか、アマゴか?」という問題については、アキが想像していた通り、明快な回答を述べます。魚籠に入っていたのはアマゴ。しかし、死体が発見された現場の付近では、アマゴを釣れるはずがない。このことから、本件は事故ではなく、殺人の可能性が高まりました。何者かが、釣り人の事故だと見せかけるべく、現場まで、死体を「運んだ」のです。しかし犯人は、アマゴという手がかりを残してしまっていました。ここから考えられるのは、犯人は釣りの知識があるものの、ヤマメとアマゴの違いまでは見分けられなかった人物、ということになります。

やがて、被害者の身元が判明しました。金融ブローカーで、前科もある高峰という男。大沢警部たちは、亡くなる前の高峰の動きを調べ、「大宝観光」という観光会社に辿り着きました。高峰は、この会社の常務(深江章喜)と秘書課長(黒部進)に接近し、融資の話を持ちかけていたのです。常務たちは、高峰との関係を即座に否定。しかし、「大宝観光」の経営状態が悪化していたことは確かで、大沢警部の中で、疑惑は拭えませんでした。

そんなとき、もうひとつの事件が発生します。アキの友人の郁代(藍とも子)と静子(花條まり)が、奥多摩へ登山に行ったまま、帰ってこないのです。2人と一緒に山へ行き、法事に出席するため先に下山したアキは、責任を感じます。静子の母(月丘千秋)や、静子と結婚することが決まっていた観光会社の社員・船岡(谷隼人)も心配する中、最悪の事態が……。

 

……というわけで、前作では父親(伊豆肇)を殺害されたヒロイン・アキちゃんは、本作では、2人の親友まで失ってしまいます。

そんな状況でも、明るさを失わないのがアキの魅力。寂しさを紛らわせるためなのか、釣部が暮らすマンションへ「押しかけ女房」的にやって来て、料理を作ったり、シャワーを浴びたり……。池上さん(アキ)と緒形さん(釣部)のやりとりが面白く、このキャスティングで第3作以降も観てみたかったと思わせてくれます(翌年の第3作では、近藤正臣さんと斉藤慶子さんが引き継ぎました。その後も林隆三さんや浅野ゆう子さんが出演し、シリーズ自体は第7作、1992年まで続きます)。

なお、第1作に続いて「山岳指導」としてクレジットされているのは、東映の名バイプレーヤーで、本作では巡査役で出演もしている相馬剛三さん。擬斗の遠矢孝信さん(なぜか本作では「考信」とクレジット)は、かつて『宇宙猿人ゴリ』(71年)で、天才科学者・ゴリ博士を演じていたスーツアクターとしても知られています。

……それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう!

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

 

<5月の『Gメン’75』>

5月が初回放送となるエピソードは、第39話から第46話。そして、4月末から引き続いて、5月1日(日)~5日(木)の22:00~26:00は、【GWイッキ見!まだ間に合う!『Gメン’75』】。第21話~第40話までが1日に4話ずつ、キャッチアップ放送されます。こちらもぜひ、お楽しみに。

さらに! オリジナル情報番組『ピンスポ!』における、藤田三保子(当時:藤田美保子)さんのスペシャル・インタビューPART2も放送。初代女性Gメン“響圭子”こと藤田さんが語る、鮮烈な撮影エピソードの数々をご堪能ください!

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年5月】

<放送日時>

『奥多摩殺人渓谷』

5月7日(土)20:00~22:00

5月13日(金)11:00~13:00

5月27日(金)13:00~14:50

 

『女の中の風』(脚本:橋本綾/出演:浅野ゆう子、加藤治子、山岡久乃ほか)

5月20日(金)11:00~13:00

 

『別れてのちの恋歌』(監督:井上昭/出演:大竹しのぶ、堤真一、田中邦衛ほか)

5月27日(金)11:00~13:00

 

『死の断崖』(監督:工藤栄一/出演:松田優作、夏木マリほか)

5月17日(火)11:00~12:50

 

『百円硬貨』(原作:松本清張/脚本:橋本綾/監督:野田幸男/主演:いしだあゆみ)

5月25日(水)16:00~17:00

 

『雪の螢』(監督:浦山桐郎/主演:大空眞弓)

5月7日(土)5:00-6:00

 

2022年4月28日 | カテゴリー: その他
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY                                                                   第38回『児童心理殺人事件』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1989年(平成元年)の『木曜ゴールデンドラマ』作品より『児童心理殺人事件』をご紹介します。

『木曜ゴールデンドラマ』は、『火曜サスペンス劇場』と同じく、日本テレビ系列の2時間ドラマ枠でした。と言うより、スタートしたのは『火サス』よりも先。1980年の4月改編にて放送が開始され、当初は読売テレビ(大阪)と日本テレビ(東京)が交替で制作を担当していましたが、『火サス』が1981年の秋の改編でスタートすると、それ以降は読売テレビが単独で制作を手がけるようになりました。

第1回放送(1980年4月3日)作品は、水谷豊の主演による『熱中時代スペシャル 水谷教授の華麗な冒険』。海外ロケを大々的に敢行し、華々しくスタートしました。第3回は東宝映画の田中友幸プロデューサーが携わった最初で最後の2時間ドラマとなった『東京大地震マグニチュード8.1』。当時、裏番組には『ザ・ベストテン』というお化け番組がありましたが、『木曜ゴールデンドラマ』も安定した視聴率を稼ぐ番組となり、1992年の春の改編で終了するまで、12年にわたって続きました。その後、『ドラマシティ’92』『ドラマシティ’93』などを経て、1993年の秋の改編で「木曜夜10時」に登場した『ダウンタウンDX』は、間もなく放送開始から30年を迎えようとしています。

 

『児童心理殺人事件』は、1989年・真夏の放送。原作は森村誠一先生の「精神分析殺人事件」でした。これを脚色したのが、長坂秀佳さん。とはいえ、タイトルだけでなく、内容もほぼ「別物」と言えるような作品となっています。

当時、長坂さんは10年間にわたってメインライターを務めた『特捜最前線』が1987年の春に終了し、続いて昼帯ドラマ『華の嵐』(88年)の原作・脚本に着手しますが、序盤の脚本を執筆していた時期に局のプロデューサーと衝突して降板。この大ヒットドラマの「原作者」として名前は残ったものの、スケジュールが真っ白になってしまったため、今度は一定期間、脚本家を休業して「江戸川乱歩賞」に挑戦しました。

そして、ここで見事に賞を獲ってしまうのが、長坂さんのスゴさ。第35回「江戸川乱歩賞」を受賞した「浅草エノケン一座の嵐」の初版発行は1989年9月なので、『児童心理殺人事件』はおそらく、受賞作を書き上げ、応募してから書かれた、脚本家への「復帰作」のひとつだったと思われます。

 

ある夏の日。小学生の波島慎一くんが、セミを捕ろうとして団地のベランダによじ登りました。2階の部屋で黙々と仕事をしていた教師の中原桂介(角野卓造)は、ふとベランダのほうを見たとき、慎一くんと目が合ったのでビックリ。そして、その直後、慎一くんの姿が、桂介の視界から消えました。慎一くんは、どうやら転落してしまったようです。桂介がベランダに出て見下ろすと、倒れている慎一くんを囲む、少年たちの姿が。間の悪いことに、桂介は、その少年たちとも目が合ってしまいました。

周りの大人たちに事情を聞かれた少年たちは、「あのおじさん(=桂介)が『コラッ!』と怒鳴ったので、慎一くんはそれに驚いたので転落した」と証言。もちろん、桂介は怒鳴ってなどいないのですが、少年たちは彼らなりに、慎一くんが転落したことに責任を感じ、咄嗟に、現実ではない記憶を「作り上げた」のかもしれませんでした。こうして、桂介は窮地に立たされます。少年たちのところへ行って、「怒鳴ってなどいないじゃないか」と言い聞かせるのですが、それでも少年たちが証言を変えようとしないので、思わず怒鳴ってしまいました。これで、桂介への周囲の印象はさらに悪化。妻の不在をいいことに、桂介が部屋へ女性を連れ込んでいた、などという噂まで出始めました。

やがて、息子の草太を連れて信州へ行っていた桂介の妻・夏子(泉ピン子)が、夫が巻き込まれた「事件」のことを聞いて、帰ってきました。夫を信じる夏子は、誤解を解くために、独自で「事件」の調査を開始。当初、旗色が悪かった中原家ですが、夏子の辛抱強い聞き込みや推理もあって、この「事件」に秘められた意外な真相が見えてくるのでした……。

 

本作で描かれている事件のポイントは、「なぜ慎一くんが転落したのか?」にあります。この真相に、劇中の登場人物たちが辿り着くまでの絶妙な語り口は、さすがに長坂さんの脚本だけあって、凡百の2時間ドラマとは一線を画しています。

また、ある意味で「被害者」でもある「中原家」という家庭も、そして慎一くんの「波島家」も、それぞれ子育てにおいて深い悩みを抱えているという設定がドラマを引き締めていました。慎一くんの両親を演じているのは、辰巳琢郎さんと平淑恵さんです。

ところで、泉ピン子さんと角野卓造さんの「夫婦」というキャスティングには、誰もが既視感を抱くことでしょう。言うまでもなく、『渡る世間は鬼ばかり』です。この作品は、1990年の秋からスタートし、2011年まで断続的に全10シリーズを放送。その後も2019年まで、ほぼ毎年のペースでスペシャル版が放送されていました。『児童心理殺人事件』は『渡鬼』がスタートする約1年前の単発ドラマですが、放送時間が後の『渡鬼』と同じく「木曜夜9時」からだったことは、面白い偶然と言えるでしょう。『児童心理殺人事件』が放送された翌月、『木曜ゴールデンドラマ』にとって長年のライバルだった『ザ・ベストテン』が終了。TBSはこの後、「木曜夜9時」枠にドラマを編成し、最初のヒット作となったのが、1990年1月から放送された『HOTEL』でした。1988年の秋からはフジテレビも「木曜夜9時」枠で『とんねるずのみなさんのおかげです。』をスタートさせており、この枠は特に平成初期において、各局がしのぎを削る「激戦区」だったのです。

……それでは、また来月の当コラムにて、お会いしましょう!

 

<4月の『Gメン’75』>

4月が初回放送となるエピソードは、第31話から第38話。ついに、と言うか、早くもGメンの行動隊長・関屋警部補(原田大二郎)が殉職を遂げます。第33話「1月3日 関屋警部補・殉職」は、日本の刑事ドラマ史上、屈指の「殉職」編。クライマックス数分の、衝撃の演出に絶句してください。

そして、4月26日(火)~30日(土)の22:00~26:00は、【GWイッキ見!まだ間に合う!『Gメン’75』】と題し、第1話~第20話までが1日に4話ずつ、キャッチアップ放送されます。こちらもぜひ、お楽しみに。

さらに! オリジナル情報番組『ピンスポ!』では、初代「女性Gメン」として、強烈な印象を残した藤田三保子(当時:藤田美保子)さんが登場。「響圭子」を演じた日々の思い出を、熱く語ってくださいます。『Gメン』ファンのみなさんは必見です!!

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年4月】

<放送日時>

『児童心理殺人事件』

4月1日(金)19:00~21:00

4月7日(木)13:00~15:00

4月12日(火)21:30~23:30

4月19日(火)23:00~25:00

 

『恋人交換殺人事件』(原作:赤川次郎/出演:池上季実子、柴俊夫、名古屋章ほか)

4月2日(土)22:00~24:00

4月8日(金)13:00~15:00

4月13日(水)21:30~23:30

4月21日(木)13:00~15:00

 

『尊属殺人事件』(出演:辰巳柳太郎、浅茅陽子ほか)

4月19日(火)14:00~15:00

 

『消えた男』(監督:堀川弘通/出演:緒形拳、秋吉久美子、中条静夫ほか)

4月26日(火)14:00~15:00

2022年3月31日 | カテゴリー: その他
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