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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第35回『第三の女』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1982年の『土曜ワイド劇場』作品『第三の女』をご紹介します。原作は、夏樹静子先生が1978年に発表された同名の小説。「第三の女」といえば、アガサ・クリスティの「名探偵ポアロ」シリーズの最末期に発表された作品のタイトルとして、ご存知の方も多いかもしれません。ちなみに、アガサ版「第三の女」はこれまで映像化の機会に恵まれていませんが、夏樹先生の『第三の女』は1982年版の後、1989年、2011年も映像化されています(詳しくは後述)。

スペインへのロケを敢行した本作は、1982年の7月から9月にかけて月イチペースで送り出されていた『土曜ワイド劇場』5周年記念企画の大トリでした。第1弾(7月放送)は連城三紀彦先生が原作の『戻り川心中』(主演:田村正和)。第2弾(8月放送)は、東映チャンネルでも過去に放送させていただいた、藤田敏八監督による『透明な季節』(主演:中野良子)。そして『第三の女』は、まさに「第3弾」でした。当時、『土曜ワイド劇場』を代表するヒットシリーズだったのが、天知茂さんが明智小五郎に扮する「江戸川乱歩の美女シリーズ」。1977年から、天知さんが急逝された1985年まで続きましたが、特に、井上梅次監督が一貫して担当していた1982年までが黄金期と言えるでしょう。その1982年は、まず1月2日に『天国と地獄の美女』を3時間スペシャルとして放送。そして長年、同時間帯番組として視聴率争いを続けてきた『Gメン’75』が最終回スペシャルを放送した4月3日にも、『土曜ワイド』側は『化粧台の美女』をぶつけました。このように、『土曜ワイド』の顔だった天知さんを主演に迎え、しかも「名探偵」ではなく「犯人」を演じさせたあたりに『第三の女』の「本気度」が感じられます。おいおい、いきなり「犯人」と書くなんてネタバレじゃないか……と思った方、ご心配なく。『第三の女』の推理ポイントは、別のところにありますので。

 

大湖浩平(天知茂)は、スペインのマドリッドにある大学で、助教授を務めていました。彼の専門は食品衛生学。マドリッドでは、小児癌に冒される子どもが増えていました。原因の一つとして有力だったのが、有害物質の入ったお菓子。ところが、大湖の上司である吉見教授(山形勲)は、お菓子メーカーと癒着しており、問題のお菓子の調査データを改竄したのです。そのため、お菓子の流通は続き、被害者も増え続けました。大湖が再調査を申し出ると、吉見はそれを拒否したばかりか、大湖に対し、別の大学への左遷人事をちらつかせます。いまや大湖にとって、吉見は「殺したいほど憎い人物」となっていました。

大湖は、自分の心を落ち着かせるため、休日を利用して、友人が別荘として利用している古城を訪ねました。ところがタイミング悪く、古城では仮装パーティが行われていたのです。大湖は仕方なく、自分も仮面を着けて、そのパーティに参加することにしました。

そのパーティの渦中で、大湖は運命的な出会いを果たします。なんと、自分と同じように「ある人物を殺したい」と考えている日本人女性がいたのです。彼女の名は、サメジマ・フミコ。お互いに素顔を明かさず、仮面のまま、2人は愛し合いました。

大湖にとって、その女性は忘れられない存在となりました。「もう一度、会いたい」と大湖は思いを募らせますが、2人をつなぐのは、ある「約束」だけです。それは「交換殺人」の約束。大湖がフミコの殺したい人を、そしてフミコが大湖の殺したい人を、それぞれ殺すという「約束」……これを最初に実行したのはフミコのほうでした。大湖のアリバイが成立する時間に、吉見教授を毒殺したフミコ。しかし、これで大湖のほうも「約束」を果たすしかなくなりました。大湖のターゲットは、美しき女性・永原翠(樋口可南子)。彼女を殺すため、日本へ帰国した大湖は箱根へ赴き、翠と接触します。そして、わずかなチャンスを逃すことなく、翠を絞殺。フミコとの再会を果たしたい大湖は、この事実をフミコに伝えたかったのですが、肝心のフミコの正体が、彼にはわかりません。翠のために夫を失った女性・久米悠子(あべ静江)や、翠にとっては異母妹にあたる永原茜(樋口可南子・二役)がフミコではないかと疑う大湖でしたが、この2人とは別に、「第三の女」がフミコである可能性も残されており……。

そのころ、マドリッド警察のマンリーケ警部(ポール・ナチィ)と私立探偵のマリア(ラ・ポーチャ)は、大湖が吉見に殺意を抱いていたことをつかんでいました。吉見の事件についてはアリバイがあった大湖ですが、来日したマンリーケ警部たちは、日本で起こった永原翠の事件との関連性に着目します。この2つの事件が「交換殺人」だったとしたら……!?

 

というわけで、物語の焦点は、仮面の女=サメジマ・フミコが誰なのか、に集約されていきます。表現を変えれば、「第三の女」は存在するのかどうか。「江戸川乱歩の美女シリーズ」においては明智小五郎として、見事な名推理と変装で奇怪な事件を解決していた天知さんですが、本作の「大湖浩平」役では、動機こそ「スペインの子どもたちを救いたい」というものながら、一つの出会いによって殺人犯へと転落していく脆い中年男性の姿を好演されました。そして、翠と茜の二役を演じた樋口可南子さん(当時23歳!)の魅力には、ただただ圧倒されます。1980年にはドラマ『港町純情シネマ』や『ピーマン白書』、1981年には映画『北斎漫画』に出演した樋口さんは、1982年になるとドラマ『女捜査官』に主演するなど、若手女優のトップへと躍り出ました。その後のご活躍は、あらためて触れるまでもないでしょう。

また、本作ではスペインと日本の警察が合同捜査を行う展開となりました。日本側の刑事には加藤武さん、石田信之さん、久富惟晴さんが扮しているほか、署長役で深江章喜さんも出演。このあたりのキャスティングの充実ぶりも、「5周年記念企画」ならではでしょう。特筆すべきはスペイン側の刑事をポール・ナチィ(ポール・ナッシー)が演じていること。ポールは1970年代のスペイン映画で狼男やドラキュラなどを演じて人気を博した俳優で、自ら脚本や監督を務めることも多かった、知る人ぞ知るスターなのです。そんな彼の出演作の中には、「アマチフィルム」がスペインの製作会社と共同で製作し、脚本・監督をポールが手がけ、狼男役をポール、戦国時代の医者を天知茂さんが演じた、『狼男とサムライ』という映画がありました。おそらく『第三の女』での天知さんとポールの出会いが、製作に至るひとつのきっかけとなっていると思われる怪作『狼男とサムライ』ですが、合作にありがちな(?)トラブルのため、日本にフィルムが到着して商品化(VHS)に漕ぎ着けたのは天知さんの急逝後のこと。ここからは推測になりますが、この作品の製作にまつわる心労が天知さんの寿命を縮めた可能性も否定できず……54歳という若すぎる死は、日本の映画・テレビドラマ界において、巨大なる損失でした。

 

さて、冒頭で触れた、その後の『第三の女』映像化ですが、主なキャスティングの推移は下記のようになります。

 

大湖浩平/天知 茂(1982)⇒永島敏行(1989)⇒村上弘明(2011)

永原 茜/樋口可南子(1982)⇒南野陽子(1989)⇒菊川 玲(2011)

永原 翠/樋口可南子(1982)⇒南條玲子(1989)⇒小沢真珠(2011)

久米悠子/あべ静江(1982)⇒大場久美子(1989)⇒高橋かおり(2011)

吉見教授/山形 勲(1982)⇒鈴木瑞穂(1989)⇒津川雅彦(2011)

 

こう見ると、やはり1982年版で翠と茜の異母姉妹を二役で表現していることは(結果的に、とも言えますが)大きな特色となっています。一方、1989年版の特徴は、主人公が永原茜となっていること。2011年版は時代を反映してか、浩平とフミコはネットを通じて知り合うという設定になっていました。

そうそう、「サメジマ・フミコ」のキャスティングについては上記で一切、触れていませんが、もちろん、ネタバレを避けるためなので、悪しからず……。

それでは、また来月の当コラムでお会いしましょう。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2022年1月】

<放送日時>

『第三の女』

1月10日(月)20:00~22:00

1月21日(金)13:00~14:50

 

『超高層ホテル殺人事件』(主演:田村正和)

1月2日(日)15:00~17:00

1月21日(金)11:00~13:00

 

『駅路』(主演:古手川祐子)

1月7日(金)11:00~13:00

1月20日(木)13:00~14:50

 

『震える髪』(主演:秋吉久美子)

1月14日(金)11:00~13:00

1月25日(火)11:00~13:00

 

『行きずりの殺意』(主演:浜木綿子)

1月11日(火)13:00~15:00

1月28日(金)11:00~13:00

2021年12月24日 | カテゴリー: その他
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY第34回(特別編)『Gメン’75』4KネガスキャンHDリマスターで放送スタート!

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、通常回と趣きを変え、いよいよ放送がスタートする人気ドラマ『Gメン’75』(12/23より、毎週木曜日15:00~17:00ほか/毎週2話ずつ放送)をご紹介します。

 

『Gメン’75』は、そのタイトル通り、1975年=昭和50年に放送が開始されました。当時、TBSの土曜夜9時枠では、1968年より『キイハンター』が5年、それに続いて『アイフル大作戦』『バーディー大作戦』が1年ずつ、放送されていました。これらの3作品に共通するのは、東映プロデューサーを「近藤照男」さんが務めていたことや、メインキャストに「丹波哲郎」さんが名を連ねていたことなどです。『キイハンター』は、当初の2年間はモノクロ放送でしたが、3年目よりカラー放送。惜しくも2021年に亡くなられた千葉真一さんが見せる超人的なアクションや、多彩なレギュラー陣のチームワークの良さ、そして同時代の他のテレビドラマをはるかに凌駕するスケール感、本格サスペンスから社会派ドラマ、ホラー、コメディなど毎回のようにアプローチを変えていく題材の豊富さなどが視聴者の心をつかみ、昭和40年代を代表するヒット作となりました。近藤照男プロデューサーは、一連の作品群を製作するにあたり、ブレーンとして深作欣二、佐藤純彌の両監督を招聘。3作品、計7年間にわたって続いた「TBS土曜夜9時アクションドラマ」は、8年目に入るところで大幅に方針を転換しました。『アイフル大作戦』『バーディー大作戦』と続いた「探偵もの」から、「ハードボイルド」を前面に押し出した「刑事ドラマ」に取り組むことにしたのです。基本設定は脚本家の高久進さんがまとめ、そのままメインライターを担当。キャストは『バーディー』から続投の丹波哲郎さん、倉田保昭さん、岡本富士太さん、藤木悠さんに加え、原田大二郎さん、藤田美保子さん、夏木陽介さんの3人が参入しました。7人のレギュラーが滑走路を並んで歩くオープニング映像は、本作のイメージを決定づけた素晴らしい演出で、いまだにこれを超えるインパクトを持ったタイトルバックは存在しないと言っても、過言ではないでしょう。本作は結果的に、7年間・全355話というロングランを達成。昭和50年代を代表するヒット作となります。平成、令和とは異なり、昭和の刑事ドラマは基本的に中断することがなく、また特番編成なども少なかったため、毎週オンエアがあり、年間50本以上が製作されることが当たり前でした(それゆえ「映画化」されることもなかったのですが……)。幾多の作品が生まれては消えていった中で、昭和40年代以降にスタートした刑事ドラマでは、『Gメン’75』は『太陽にほえろ!』『特捜最前線』に続く長寿番組として、その名を歴史に残しています。

 

記念すべき第1話「エアポート捜査線」では、麻薬の密輸事件をめぐって、捜査一課、捜査三課、捜査四課、外事課の刑事たちが活躍。後に黒木警視(丹波哲郎)が、この事件の捜査に関わった者たちを一堂に集め、「特別潜入捜査班」を編成しました。この「特別潜入捜査班」こそが、いわゆる“Gメン”なのです。

驚くべきことに、『Gメン’75』という作品が目指す世界観は、この第1話で、ほぼ確立されていました。その後、初期はわずかに『キイハンター』的なテイストが残るエピソードも存在したものの、第1話で示した方向性が、『Gメン’75』の基調となっていきます。その意味で、12月放送分のエピソードでもう1本、確実にチェックしておくべきは第4話「殺し屋刑事」でしょう。放送3年目からレギュラーとなり、丹波哲郎さんとともに『Gメン’75』を代表する顔となっていく若林豪さんがゲスト出演した回で、第1話と並んで、初期『Gメン’75』の傑作となっています。

 

初期『Gメン’75』の最重要キャラクターといえば、原田大二郎さんが演じた関屋警部補と、藤田美保子さんが演じた響圭子刑事でしょう。Gメンの「行動隊長」として、さまざまな困難に立ち向かっていく関屋警部補は、原田さんの当たり役。第33話で殉職という異例の早期降板となったのが残念でしたが、「初期メン」に関屋がいなかったら、おそらく『Gメン’75』は良いスタートダッシュをきれなかったのではないでしょうか。12月の「シネマ☆チョップ!」ならびに「ピンスポ!」では原田さんが登場。関屋警部補として生きた日々のことを、熱っぽく語っていただきました。本編と合わせ、こちらもご視聴いただければと思います。そして響圭子は、初代「女性Gメン」であるだけでなく、日本の刑事ドラマにおいて、初めて主役級のポジションを得た「女刑事」です。この設定は、1975年が「国際婦人年」だったことと無関係ではないでしょう。また一方で、『キイハンター』では野際陽子さん、『アイフル大作戦』では小川真由美さんと、『Gメン’75』の源流となる作品群で女優が存在感を示していたことも、影響していたと考えられます。

 

『Gメン’75』について語り始めるとキリがないですし、その一方で、作品には、ご覧になった人の数だけ「捉え方」があると思いますので、今回はここまでとしておきます。東映チャンネルでは、中断期間を挟みつつも、全355話を放送予定。また作品の節目に差しかかったころ、このコラムで再び、本作について触れる機会もあるでしょう。

それでは、また次回へ。

なお、12月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」における注目作は、チャンネル初放送となる『連鎖寄生眷属』。ひとりの老婆を助けたばかりに、幸せな家庭が崩壊していく恐怖が鮮烈に描かれます。その他の作品群も含め、ぜひご堪能ください。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

 

<違いのわかる傑作サスペンス劇場>

『連鎖寄生眷属』

12月11日(土)21:00~23:00

12月24日(金)11:00~12:50

 

『非行少年』

12月17日(金)13:00~15:00

 

『夕陽よ止まれ』

12月10日(金)11:00~13:00

12月27日(月)23:00~25:00

 

『沈黙は罠』

12月17日(金)11:00~13:00

 

『0計画(ゼロプラン)を阻止せよ』

12月3日(金)11:00~13:00

12月15日(水)22:30~24:20

2021年11月29日 | カテゴリー: その他
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第33回『妻の疑惑』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1986年の『火曜サスペンス劇場』作品『妻の疑惑』をご紹介します。原作は、『木枯し紋次郎』でも知られる笹沢左保先生の「夫と妻の時効」(84年)。このタイトルのほうが(原題ゆえ)当然ながら、作品の内容を端的に表しているのですが、ドラマ化にあたっては、原作にあった不倫の要素などを排したうえで、『妻の疑惑』と改題されて、主人公・雪絵の心情に、より深くスポットが当てられた印象です。放送は1986年1月7日ということで、同年の「初回」オンエア作品。1983年から順に大竹しのぶさん、小川知子さん、大原麗子さんが務めてきた『火サス』の「年間トップバッター」を、この年は浜木綿子さんが担いました。ちなみに、この前回放送にあたる1985年12月24日の『火サス』は、「全編生放送」というチャレンジで話題となった『たった独りのあなたのために』(脚本:今野勉/主演:岸本加世子)。翌週の大晦日には『火サス』の枠で、「年末時代劇スペシャル」の第1作『忠臣蔵』(2日目)が編成されていました。

 

倉本雪絵(浜木綿子)は、土地開発庁・課長を務める倉本洋平(井川比佐志)の妻。長女である花江(高松涼子)もすくすく育っており、幸せな日々を過ごしていました。ただし、倉本夫妻には本来、花江の兄にあたる長男・一郎がいました。この一郎は幼くして、不慮の事故死。雪絵の夢の中には、いまでも一郎が頻繁に出てきます。一郎への思いも含めて、花江を大切に育てていきたいと、雪絵は日々、花江に最大限の愛情を注いでいました。

そんなある日の夜、洋平が泥だらけになって帰ってきました。「同窓会」に出席するために熱海へ出かけていたはずの洋平でしたが、明らかに動揺しており、雪絵は「夫に何かがあった」と直感します。そして翌日、雪絵はニュースで、伊豆で「九条小太郎」という小学生が行方不明になったことを知ります。熱海と伊豆……もしかしたら夫は、この事件に関与したのではないのか? しかも夫は、雪絵に相談もなく、熱海に行くときにも使った車を売ってしまいました。「妻の疑惑」は、いよいよ募るばかりです。

静岡県警の島田刑事(速水亮)は、捜査を進める中で、江藤(深江章喜)という中年男性が、怪しい車を目撃していたことを突き止めました。江藤の証言で、その車の色が白だったこと、またナンバーの一部も記憶していたため、島田は条件に合う車の「アリバイ」を調査していきます。島田刑事が洋平の車に辿り着くのは、時間の問題でした。

洋平が不在中に、倉本邸へやってきた島田刑事は、雪絵から洋平が「熱海」へ行っていたこと、そして「車を突然売った」ことを聞き、手応えをつかみました。状況から言って、洋平が事件に絡んでいる可能性は、どう考えても高いのです。雪絵は、帰宅した洋平を問いつめますが、洋平は黙して語りません。ところが、洋平の友人・高畠(小林勝彦)の証言で、「熱海で同窓会があった」ことも、ウソだったと判明しました。いったい、洋平は妻にウソをついて、どこへ行っていたのでしょうか。また、洋平は小学生・小太郎くんの行方不明事件に関与しているのでしょうか。すべては、小太郎くんが発見されれば判明するのでしょうが、依然として、小太郎くんの消息は不明でした……。

 

さまざまな謎を孕みながら、静かに、しかし時に大胆に展開されていくストーリー。意図的に、あらすじからは省きましたが、小太郎の母である昌子(宮下順子)や、洋平とは癒着関係にある大手建設会社の社長・野沢剛造(川地民夫)といった人物が、物語に大きく絡んできます。夫に対して疑惑を抱く妻もまた、過去に息子を事故で失っていたという設定もポイント。後半では、花江が誘拐されるという事件まで発生し、最後の最後まで、目が離せないドラマとなっています。花江役の高松涼子さん(子役)は当時、NHK大河ドラマ『いのち』(86年)にも出演し、後には小林綾子さんや岸本加世子さんが引き継いでいく「岩田征子」の幼年期を演じていました。

 

それでは、また次回へ。11月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第4回で採り上げた『女からの眺め』(脚本:早坂暁/出演:岡田茉莉子、樹木希林、三ツ矢歌子、加藤治子ほか)、同じく第16回で採り上げた『運命の旅路』(出演:丘みつ子、高峰三枝子ほか)、1981年の『土曜ワイド劇場』より『死刑執行五分前』(出演:若山富三郎、中村玉緒、高岡健二ほか)、1983年の『土曜ワイド劇場』より『断線』(脚本:橋本綾/出演:松田優作、風吹ジュン、辺見マリほか)が放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください。さらに12月からはいよいよ、東映テレビドラマ史を代表する「あの名作」も放送スタート予定です!!!

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

 

<放送日時>

『妻の疑惑』

11月2日(火)11:00~13:00

11月30日(火)20:00~22:00

 

『女からの眺め』

11月24日(水)11:00~13:00

11月30日(火)11:00~13:00

 

『運命の旅路』

11月25日(木)11:00~13:00

 

『死刑執行五分前』

11月2日(火)13:00~15:00

11月23日(火)11:00~13:00

 

『断線』

11月12日(金)11:00~13:00

2021年10月25日 | カテゴリー: その他
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第32回『断罪』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1985年の『火曜サスペンス劇場』作品『断罪』をご紹介します。原作は江戸川乱歩賞作家で、弁護士としての顔も持つ和久峻三先生。本作では、裁判長役で出演もされています。その代表作は「赤かぶ検事シリーズ」や「京都殺人案内シリーズ」など。本作の原作となった同名作品「断罪」は、放送の前年である1984年に発表された作品でした。放送は1985年4月16日。時代的には、電電公社(この響きも懐かしい……)がNTTへ、日本専売公社がJTへ、それぞれ「民営化」したころです。またフジテレビでは平日・夕方の時間帯で『夕やけニャンニャン』がスタート。間もなく「おニャン子クラブ」ブームが巻き起こっていきます。4月17日には、阪神タイガースのバース・掛布・岡田による「バックスクリーン3連発」があり、約半年後(10月16日)には、21年ぶりのセントラルリーグ優勝を手にしました。アラフィフの筆者は昨日のことのように当時を思い出せますが、もう36年も昔(つまり1985年も丑年)のことなのですね……。

 

BAR「山科」で働く工藤紀美子(松尾嘉代)には、2人の息子がいました。長男は、同じく「山科」でバーテンダーを務めている康男(杉本哲太)。次男は病院長・大沢誠造(神山繁)との間に生まれたばかりの誠介です。紀美子は誠造の愛人で、誠介の認知を誠造に求めていましたが、まだ実現していませんでした。康男は、自分という息子がありながらも、異父弟にあたる誠介を溺愛している紀美子に対して、複雑な思いを抱えていました。

そんなある日、誠介がポットに入っていた熱湯を浴びて、火傷を負いました。この事故には不自然な点が見受けられたため、早速、奥山刑事(草薙幸二郎)と矢崎刑事(中田博久)が捜査を開始。当初、紀美子は、誠造の正妻である道代(長内美那子)が怪しいと警察に進言しましたが、道代には「ホストクラブに行っていた」というアリバイが存在することが判明します。さらに捜査が進み、逮捕されたのは、なんと康男でした。異父弟である誠介に、母親の愛情を奪われたことが、犯行の「動機」とされたのです。当然、康男には身に覚えがありませんでしたが、なんと紀美子は、大沢誠造に誠介の認知をしてもらいたいので、ここは一旦、罪を認めてほしいと康男に懇願。心ならずも、康男は刑事たちにウソの自供をするのでした。誠介が認知さえされれば、紀美子が自分を助けてくれるだろうと、一縷の望みをかけていたのです。

しかし今度は、なんと道代が康男のために弁護士を雇いました。道代としては、どうしても夫の誠造に、誠介の認知をさせたくなかったのです。その目的のために雇われた萩野弁護士(大場順)は、「康男犯人説」を覆すべく、調査を進めていきます。これに対し、実の母である紀美子は一貫して、「康男犯人説」を主張。裁判で展開されたのは、母親が息子の犯行を否定するどころか強く主張するという、異様な状況でした。果たして、誠介に火傷を負わせた真犯人は誰なのでしょうか。そして、紀美子の求める「誠介の認知」という夢は、叶うのでしょうか……。

 

常に「鬼気迫る」という表現が相応しい松尾嘉代さんが、本作でも感情の起伏が激しい主人公を好演しています。不幸な身の上だったとはいえ、紀美子は自分のことしか考えない、利己的な女。この紀美子の身勝手さを描いていくうえで、息子である康男も重要な役どころでしたが、近年では映画やテレビドラマのバイプレーヤーとして高い評価を受けている杉本哲太さんが、抑えた演技で見事に、康男の人物像を表現していました。当時の杉本さんは19歳。映画『白蛇抄』(83年)への出演で、俳優としても注目を集め始めた時期でした。

また、松尾さんと演技合戦を繰り広げるのが、道代を演じた長内美那子さんと、あらすじには登場していませんが、康男の恋人・しのぶを演じた中村久美さん。松尾さんVS長内さんや、松尾さんVS中村さんのシーンを観ているだけでも、のめり込んでいける作品になっています。もちろん、和久先生の原作だけあって、裁判シーンも見応えたっぷりです。なお各種資料には、キャストとして西田健さんの名前も含まれていますが、実際の完成作品では西田さんの出演を確認できませんでした(クレジットもありません)。撮影には参加したが出演シーンがカットされたのか、それともスケジュールの都合などで、演じるはずだった役柄に代役が立てられたのか……そのあたりの詳細は不明です。

 

それでは、また次回へ。10月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第3回で採り上げた『女教師』(脚本:新藤兼人/出演:和泉雅子、黒沢年男ほか)、同じく第15回で採り上げた『華やかな死体』(監督:池広一夫/出演:竹脇無我、佐藤慶ほか)、1984年の『火曜サスペンス劇場』より『妄執の女』(原作:和久峻三/出演:市原悦子、財津一郎、誠直也ほか)、1979年の『土曜ワイド劇場』より『松本清張の聞かなかった場所』(出演:藤田まこと、大谷直子、森下愛子ほか)、1982年の『土曜ワイド劇場』より『松本清張の駅路』(脚本:山田正弘/監督:富本壮吉/出演:古手川祐子、広岡瞬、田村高広、吉行和子、大坂志郎、潮哲也ほか)が放送されます。これらの作品群も、ぜひご堪能ください。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

 

<放送日時>

『断罪』

10月5日(火)13:00~15:00

10月13日(水)20:00~22:00

10月18日(月)11:00~13:00

10月26日(火)11:00~13:00

 

『女教師』

10月12日(火)11:00~12:30

10月16日(土)15:30~17:00

10月21日(木)24:00~25:30

 

『華やかな死体』

10月26日(火)13:00~15:00

 

『妄執の女』

10月5日(火)11:00~13:00

10月13日(水)22:00~23:50

10月20日(水)11:00~13:00

 

『松本清張の聞かなかった場所』

10月18日(月)21:30~22:50

 

『松本清張の駅路』

10月19日(火)11:00~13:00

2021年10月4日 | カテゴリー: その他
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第31回『空白の実験室』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1986年の『火曜サスペンス劇場』作品『空白の実験室』をご紹介します。原作は、直木賞作家の渡辺淳一先生。渡辺先生といえば、どうしても(?)『失楽園』(97年)などの恋愛小説のイメージが強いですが、もともとは整形外科医としての顔も持っており、作家としてのキャリアの初期には、医療をテーマとした社会派小説も多く手がけておられました。本作も、そんな時代に生み出された作品のひとつで、単行本化は1972年。『火サス』版から遡ること4年、1982年にはTBSにて、古谷一行さんの主演で映像化されています。このときの脚本も『火サス』版と同じく、宮川一郎さんが担当。『火サス』版では、主人公・倉本が男性から女性に設定変更されており、そのほかに、ある重要な登場人物についても、やはり性別が変更されました。

外科講師・倉本冴子役は浜木綿子さん。今回の役柄が好評だったこともあるのでしょうか、浜さんは本作の約半年後から、同じ『火サス』で『監察医・室生亜季子』シリーズに主演することになります。同シリーズは1986年から2007年まで20年以上、全37作にわたって続き、『火サス』史上ナンバー1のロングランを記録しました。

 

東央医大ではいま、恐ろしい事件が起ころうとしていました。

約半年前、第一外科の高森教授が白血病で死亡したのに続き、今度は坂上助教授が同じ白血病で倒れたのです。10万人に3人の割合でしか罹らないと言われている病気に、なぜ同じ病院、同じ外科の医者が2人も続けて罹ったのでしょうか。

これを「偶然」と見る向きもありましたが、外科講師の倉本冴子は、さすがに不審を抱きました。ところが、同じく講師の小貫正之(日下武史)が、冴子の動きに気づき、これを牽制します。この件について究明することが、東央医大にとっては大きな不利益をもたらすのではないか、と言うのです。確かに、その意見には一理ありました。しかし、高森教授と坂上助教授の死で、次の教授の最有力候補と目されているのが、まさに小貫でした。冴子には考えたくもないことでしたが、もし小貫が「犯人」だとすれば、動機はじゅうぶん、ということになります……。

冴子は小貫の牽制を無視して、独自の調査を続けることにしました。これに、内科の井石伸一(橋爪功)が協力します。いま、わかっているのは、亡くなった坂上助教授の骨がボロボロになっていたことでした。さらに、高森教授の未亡人(阿部寿美子)からも遺骨の提供を受けた冴子は、本格的に骨を分析。すると、なんと高濃度のアイソトープが検出されました。さまざまな状況を総合すると、「犯行」にはストロンチウムが使われた可能性が高いことが判明。果たして誰が、何のために、そして、どうやって、このような恐ろしい犯罪を実行したのでしょうか。

冴子には、小貫への疑念が、どうしても消えませんでした。そこで冴子は直接、小貫と話してみることにします。ところが、小貫から返ってきたのは、意外な言葉でした……。

 

というわけで、本作は病院関係者が放射性物質を使って殺人事件を起こすという、なかなか“エグい”タイプのサスペンス。意外な犯人と、その衝撃的な動機については、ここでは、匂わせる程度にも書かないほうが良いでしょう。ぜひ、映像でご確認ください。

少しだけ補足しておくと、冒頭で述べた、一部の登場人物の「性別の変更」は、本作ではうまく機能していたと思います。おそらく、原作が発表された時点では、現実の医学界を考えると、このような設定はむずかしかったのでしょうが、10数年の時を経て、それが可能になったということでしょう。TBS版を『火サス』版にするにあたって、脚本の宮川さんが思いついたのか、それとも企画サイドからの提案だったのか……興味深いところです。

その他の登場人物としては、看護師たちがメインでした。看護師長にあたる沢藤ふさ子を演じているのは市川靖子さん。兄である二代目市川猿翁の元・妻が浜木綿子さんということで、俳優の香川照之さんにとって市川さんは叔母にあたります。

また、「実験室のボス」と言われるほどの経験と知識を持つ河北幸子役は、文学座所属の実力派・寺田路恵さん。さらに、田島知子役を三浦リカさん、三枝路子役を音無真喜子さんが、それぞれ演じました。三浦さんは後の『監察医・室生亜季子』シリーズにおいても長きにわたって、看護師役で浜木綿子さんと共演していくことになります。

 

それでは、また次回へ。9月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第14回で採り上げた『不安な階段』(監督:野田幸男/出演:浜木綿子、仙道敦子、乙羽信子ほか)、1980年の『土曜ワイド劇場』より『京舞妓殺人事件』(監督:牧口雄二/主演:長門裕之)、1983年の『火曜サスペンス劇場』より『青い幸福』(監督:馬場昭格/出演:新珠三千代、岡田裕介ほか)、1991年の『水曜グランドロマン』より『別れてのちの恋歌』(監督:井上昭/出演:大竹しのぶ、堤真一、田中邦衛、西田健ほか)が放送されます。これらの作品群も、ぜひご堪能ください。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

<放送日時>

『空白の実験室』

9月7日(火)13:00~15:00

9月14日(火)21:30~23:30

9月28日(火)11:00~13:00

 

『不安な階段』

9月15日(水)16:00~17:00

 

『京舞妓殺人事件』

9月14日(火)11:00~13:00

 

『青い幸福』

9月7日 (火)11:00~13:00

9月21日(火)13:00~15:00

 

『別れてのちの恋歌』

9月21日(火)11:00~13:00

2021年8月26日 | カテゴリー: その他
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第30回『間違った死に場所』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1989年の『現代神秘サスペンス』作品『間違った死に場所』をご紹介します。原作は、1995年に「恋」で直木賞を受賞することになる小池真理子先生。本作は短編集「あなたに捧げる犯罪」(89年2月発行)に収められたうちの1本で、同じ短編集に収められた「妻の女友達」は、日本推理作家協会賞を受賞しました。さらに言うと、この「妻の女友達」は、『間違った死に場所』が放送された翌週、テレビ東京の『月曜・女のサスペンス』枠で映像化されました。直木賞の受賞前とはいえ、小池先生の作品が当時、注目を集め始めていたことがわかります。

脚本は、1985年からスタートした『スケバン刑事』シリーズで注目を集めた橋本以蔵さん。1988年に放送され、いわゆるトレンディドラマの元祖的な存在と位置づけられている『君の瞳をタイホする!』も橋本さんがメインライターでしたが、この作品でヒロインを演じたのが、本作の主演でもある浅野ゆう子さんでした。

1988年から1989年にかけて、浅野さんはフジテレビの『抱きしめたい!』や『ハートに火をつけて!』に主演。89年の10月クールからはTBS『雨よりも優しく』への主演が決まっていました。そんな状況下ゆえ、単発ドラマ、しかも1時間ドラマへの出演というのはかなり減っていたため、本作は貴重な1本といえるかもしれません。また音楽を、90年代に入ってから大ブレイクする大島ミチルさんが手がけている点も要チェックでしょう。

 

テレビで人気のキャスター・恩田(大出俊)が、愛人である山崎満美子(浅野ゆう子)に絞殺されました。しかし実際には、仕事に疲れきっていた恩田のほうから、満美子に「殺してくれ」と頼んだのでした。満美子はまず、恩田の正妻(野際陽子)に電話で報告し、そのうえで「いまから自首します」と伝えました。ところが、正妻はなぜか、満美子に「自首するな」と厳命。娘(室井滋)と娘婿(佐野史郎)を連れて、3人で満美子のところへやって来たのです。なんと恩田は、自分が自宅以外で死んだ場合は、遺産を家族には相続させないという、ちょっと変わった遺言を書いていたのでした。そのため、正妻たちにしてみれば、恩田が愛人の家で殺されたとなると、遺産が受け取れないという問題が発生するのです。

そのため、本来なら責められるべき満美子は、恩田の家族から全く責められませんでした。その代わり、満美子は恩田の死体を恩田の自宅に運ぶのを手伝わされます。満美子は、複雑な思いでした。自分が愛した人の死を、家族は悲しむどころか、遺産のことしか考えていないのです。満美子自身は、自首の覚悟もしていたというのに……。

ともあれ、死体は自宅へ運ばれ、家族も一安心。しかし、何か忘れてないだろうか……と考えたところ、大問題が残っていました。恩田は殺される前、満美子の家でブランデーを飲んでいたのです。警察が死体を解剖した際、恩田の家にはないはずのブランデーが胃の中に残っていることがわかれば、恩田の「死んだ場所」が疑われてしまう!それゆえ、恩田の娘がブランデーを取りに行くことになりました。これで、恩田の家にブランデーが運ばれれば、ちょっと歪な「完全犯罪」の成立です。恩田の家族にとってみれば、恩田が死んだ場所が「自宅」ということになりさえすれば、それで良いのです。もはや、恩田の家族にとっても不要な存在となった満美子は、失意の中、再び自首の準備を始めるのでした……。

ところが、警察に電話をかけても、つながりません。それどころか、夜の街は、とても騒がしいことになっていました。公衆電話に並ぶ人々、つながらない電話、サイレンをけたたましく鳴らしながら行き交う救急車や消防車……。そう、「何か」が起こったのです。その「何か」とは、満美子の運命を劇的に変えてしまう、誰も想像し得なかった出来事でした。

 

「不倫相手に殺される人気キャスター」という“つかみ”から入った本作は、なぜか家族が、被害者が死んだ“場所”にこだわるという意外な展開を見せます。そのシチュエーション自体が異様なので、前半は一周回ってコミカルな印象さえ受けます。家族の態度に呆気にとられる浅野ゆう子さんに対し、家族側を演じているのが野際陽子さん、室井滋さん、佐野史郎さんということで、90年代に入ったら、この4人を1時間の単発ドラマで揃えるのは困難だったことでしょう。室井さんは1988年にスタートした『やっぱり猫が好き』のヒットで、人気が出た直後(考えてみれば、この作品での役名も偶然、本作と同じく“恩田”レイ子でした)。野際陽子さんはもちろん『キイハンター』(68年)などへの出演で、すでに有名でしたが、再ブレイクを果たしたのは、佐野史郎さんと母子役で共演した『ずっとあなたが好きだった』(92年)でした。佐野さんが一躍、時代の寵児となったのも同作ですから、本作での4人の共演は、テレビドラマ史全体として捉えても、面白い事実と言えるでしょう。その後の『長男の嫁』(94年)、『長男の嫁2~実家天国』(95年)では、浅野さん、野際さん、佐野さんの3人が出演していました。

 

さて、本作の凄みは、終盤の「どんでん返し」にあります。前半の展開も意外性に満ちていたのですが、恩田家の面々の態度も、ヒロイン・満美子を演じる浅野ゆう子さんの抑えた演技も、すべてが一種の“フリ(前フリ)”でした。

本作を最後までご覧になって、「何ソレ?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに、決して「よくある」展開とは言えず、人間が生きているうちに一度出会う(直面するということではなく)かどうかという事態にメインの登場人物“全員”が巻き込まれるわけですから、これを「反則」と捉える、厳しい視聴者もおられるでしょう。

しかし……普通なら「なんとかして自分の罪を隠したい」と考えるところ、最初から最後まで「恩田への愛」を貫き、自分が逃げることなど一切、考えなかった満美子には、思いがけない未来が訪れました。逆に、最初から最後まで「遺産」のことしかアタマになかった恩田家の人々は……。

とにかく、本作については、騙されたと思って(?)一度、ご覧いただくことを特にオススメします。

 

それでは、また次回へ。8月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第13回で採り上げた『ステレオ殺人事件』(脚本:掛札昌裕/監督:小山幹夫/主演:秋吉久美子)、同じく第1回で採り上げた『現代鬼婆考・殺愛』(監督:竹本弘一/出演:千葉真一、志穂美悦子、野際陽子、柳永二郎ほか)、1973年の『サスペンスシリーズ』より『人妻恐怖・地獄道路』(監督:降旗康男/出演:野際陽子、中丸忠雄ほか)、1982年の『傑作推理劇場』より『妻よ安らかに眠れ』(出演:愛川欽也、畑中葉子ほか)が放送されます。これらの作品群も、ぜひご堪能ください。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

 

<放送日時>

『間違った死に場所』

8月3日(火)13:00~14:00

8月14日(土)19:00~19:50

8月31日(火)14:00~15:00

 

『ステレオ殺人事件』

8月10日(火)13:00~14:00

8月29日(日)14:00~15:00

 

『現代鬼婆考・殺愛』

8月3日 (火)14:00~15:00

8月24日(火)13:00~14:00

 

『人妻恐怖・地獄道路』

8月24日(火)14:00~15:00

8月31日(火)13:00~14:00

 

『妻よ安らかに眠れ』

8月10日(火)14:00~15:00

8月15日(日)12:00~13:00

2021年7月26日 | カテゴリー: その他
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