その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第47回『外科病棟の女医』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1983年の『土曜ワイド劇場』より『外科病棟の女医』をご紹介します。放送日は1983年8月6日でした。ちょうど40年前、1983年の夏というと、7月に任天堂が「ファミリーコンピュータ」(ファミコン)を発売。8月の全国高校野球選手権大会では、あのKKコンビ(清原和博・桑田真澄)の活躍で、大阪のPL学園高校が優勝しました。この当時、KKコンビは1年生。大会の開幕は8月8日(月)だったので、『外科病棟の女医』が放送された時点では、まだ2人は「全国区」の知名度ではなかったことになります。

7月下旬には、山陰地方で豪雨のために死者・行方不明者が100人を超えるという災害が発生しました。『外科病棟の女医』は、偶然でしょうが、その山陰地方=鳥取県米子市が全編の舞台となっています。東映の歴代テレビ作品ではおなじみ、皆生グランドホテルも登場しました。原作は、井口民樹先生の『外科病棟の陰謀』。ストーリー的には、こちらの原題のほうが、よく内容を表していると思います。主人公となる若き外科医を演じるのは、真野響子さん。凛とした美しさに、妖艶さも兼ね備えた「和泉加代」を好演されています。ちなみに、翌週(8月13日)に放送された『死美人ホテル』の主演は、真野さんの夫である柴俊夫さんでした。また、イメージ的には意外な役で出演している岡江久美子さんは、前週(7月30日)放送の『火の坂道』に続いての『土曜ワイド劇場』出演。さらに遡ると、7月23日放送の『団地妻のさけび』には、岡江さんの夫である大和田獏さんが出演。2人はこの年の春に結婚したばかりでした。

 

さて、ストーリーを紹介していきましょう。

鳥取県米子市にある北陽大学の医学部附属病院で外科医として働いている和泉加代は、同じ第一外科で働く講師・交野修治(田村亮)と交際していました。2人は結婚を決め、加代にとっては恩師にあたる第一外科の緋田教授(下元勉)に、その意思を報告に行きます。しかし緋田は、2人の結婚を快く思っていないらしく、加代が学位を取るまで待てと、事実上の「反対」を表明しました。緋田は年齢を離れた加代に想いを寄せており、交野に加代を「奪われた」という気持ちだったのです。緋田は次期医学部長の呼び声が高い実力者。そして交野もまた、外科医としての腕を見込まれているエリート。緋田と交野は当然のように、激しく反発し合いました。

なんとしても緋田に加代との結婚を認めさせたい交野は、叔父であり、医師会の会長を務めている津沼詮造(北村和夫)に相談を持ちかけます。津沼は交野の頼みを聞き入れ、緋田が医学部長のポストを手に入れられるよう、援助することにしました。そうなると、緋田も無理は言えません。こうした裏工作の成功で、交野と加代の結婚話は、うまく進むかに思われました。

しかし交野には心配事がありました。外科医として最も大事な右腕が最近、激しく痛むのです。右腕にできた腫瘍は、良性なのか、悪性なのか。交野も信頼を置く、助手の大石(高岡健二)は自信を持って良性だと告げたが、緋田は悪性だと診断。しかも、この分野で権威のある東京の医師も緋田と同意見だったため、交野は右腕を切断せざるを得なくなります。今村助教授(中尾彬)の執刀で、手術自体は成功。しかし、交野の外科医としての未来は、大きく変わってしまいました。

失望しつつも、強く生きようとしていた交野。そして、彼を支えながら生きていこうと決意した加代。ところが、ある日突然、交野は死体となって発見されます。現場の状況から、米子署の刑事(斉藤真)は自殺の可能性が高いと判断。ただし、加代にはとても信じられませんでした。医師である交野なら、もっと確実に死ねる方法で自殺するはず。最終電車が通った後に、線路に飛び降りるという死に方は、あまりに不自然でした……。

交野の死後、緋田教授は真剣に、加代に対して「医学部長夫人になる気はないか」とプロポーズしてきました。しかし考えてみれば、交野が死ぬ前から、交野の周辺では、おかしなことがたくさん起こっていました。交野が恐れていた女・青木由美(岡江久美子)は、いったい交野とどんな関係だったのでしょうか。そして、良性か悪性かで意見が分かれていた交野の腫瘍は、本当に悪性だったのでしょうか。真相を知りたいと動き始めた加代はやがて、とんでもない事実に突き当たるのでした。

 

前半でのメインとなる登場人物・交野は、中盤で死亡。後半では、加代と由美という、2人の女性が物語を引っ張っていきます。本作において、絶妙な味を出しているのが、緋田教授役の下元勉さんです。また、今村助教授役の中尾彬さんの役作りもお見事。さらに言えば交野のような人物は普通ならば爽やかな好青年として描かれそうなところですが、本作では、そこにも一捻り、加えられています。冒頭は岡江久美子さんが演じる由美が激しい「怒り」を見せるところから始まるのですが、この由美が後半、どのようにストーリーの中軸に関わってくるのか、といったあたりに注目していただければと思います。

監督は、東宝テレビ部の作品が多かった日高武治さん。1983年は、大きな話題を呼んだ『積木くずし~親と子の200日戦争~』(主演:高部知子/最高視聴率45.3%)や、同じスタッフが手がけた『私は負けない!ガンと闘う少女』(主演:松本伊代)なども担当されており、キャリア的にも絶頂期にあったと言えるでしょう。実力派のスタッフ・キャストによる、骨太なドラマをぜひ、ご堪能ください。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

<2月の『Gメン’75』>

2月が初回放送となるエピソードは、第117話から第124話です。第117話「日本降伏32年目の殺人」は、第114話と並行して撮影された長崎ロケ編。第123話&第124話は、誘拐をテーマにしたスケール豊かな前後編となっています。ぜひ、ご期待く

 

【違いのわかる傑作サスペンス劇場/2023年2月】

<放送日時>

『外科病棟の女医』

2月2日(木)23:00~24:40

2月18日(土)20:30~22:10

 

『盗聴する女』(出演:浅野ゆう子、岡田茉莉子、森次晃嗣ほか)

2月3日(金)13:00~15:00

2月17日(金)13:00~15:00

 

『空白の実験室』(原作:渡辺淳一/出演:浜木綿子、橋爪功、平泉成ほか)

2月10日(金)13:00~15:00

2月24日(金)13:00~15:00

2023年1月26日 | カテゴリー: その他