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その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第24回『極刑』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1982年11月に放送された「火曜サスペンス劇場」作品『極刑』をご紹介します。この作品は、推理作家・ノンフィクション作家の福田洋先生が1981年に発表した『極刑 女流デザイナー誘拐殺人事件』を原作として、映画『華麗なる一族』(74年)、『不毛地帯』(76年)など骨太な作品を手がけてきた山田信夫さんが脚本化し、近年も水谷豊さん主演の『無用庵隠居奉行』シリーズなどを担当している吉川一義さんが監督を務めた作品です。

『極刑 女流デザイナー誘拐殺人事件』の題材となったのは、1965年に新潟県で発生した「新潟デザイナー誘拐殺人事件」でした。ドラマ版『極刑』も、かなり事実に基づいた描写がなされていますが、事件の舞台は新潟県新潟市から、群馬県高崎市へと変更されていました。

 

ある晩、群馬県高崎市に住む若い女性・高森由利子(美池真理子)が何者かによって誘拐されました。犯人が高森家に対して要求してきた身代金は、なんと2000万円。由利子の母である信子(左幸子)は、息子夫婦(住吉正博/早川絵美)とも相談し、警察に連絡を入れました。早速、大勢の捜査員が配備される中、信子たちは身代金を犯人に渡すべく、高崎駅へと向かいます。ところが犯人は、信子に対し、電車に乗って、指定の地点で窓から金を投げ落とすよう、指示を変更。信子はこれに従いますが、緊張と焦りで、うまく電車の窓を開けることができず、金を投げ落とすことはできませんでした。

落胆する信子たち。警察は「身代金を手に入れるまでは、犯人は人質を手にかけないはずだ」と気休めを言いますが、その後、間もなく、由利子は遺体となって発見されました。しかも、解剖の結果、由利子は身代金の受け渡し時刻より前に殺害されていたことが判明。あまりにも残酷な犯人の手口に、このニュースを知った人々は戦慄します。高森家と付き合いのあった、中古車販売業を営む寺尾俊平(垂水悟郎)とツネ(草笛光子)の夫婦も、例外ではありませんでした。いえ、むしろ近しい間柄だけに、ツネはこの事件を、他人事とは思えないほど、心を痛めていたのです。

しかし、ツネにとって全く想定外の事態が待ち受けていました。なんと、ツネの息子である浩二(金田賢一)が、この事件の容疑者として逮捕され、犯行を自供したのです。寺尾家に向けられる、世間からの非難。それでもツネは、息子が犯人だとは思えませんでした。浩二を信じ続けようとするツネでしたが、接見しても、なぜか浩二は口を閉ざします。そして担当検事(佐古雅誉)はツネに、浩二の前で彼の妻(立石凉子)の名前を出さないように釘を差しました。妻の名前を出すと、浩二が取り乱してしまうから、だそうです。ツネは腑に落ちませんでしたが、これに従うことにしました。

やがて浩二は、裁判で極刑である「死刑」を求刑されます。これには世間も納得。しかしツネの思いは変わりません。そんなとき、浩二が公判中に突如として容疑を否認。彼が初めて語った事件の全貌は、かなり具体的なものでした。もし浩二の証言が事実なら、彼は誘拐にこそ関わっていたものの、あくまで主犯グループに脅迫され、命じられるままに動いていたことになります。果たして、浩二が言うところの「リュウ」、そして「高橋」という人物は存在するのでしょうか。息子の死刑を阻止すべく、ツネは執念の調査を続けますが――。

 

というわけで、「浩二が真犯人なのか?」という点が、物語の主眼です。ただ、あらすじにも記した通り、浩二の態度には当初、特に不審な点が多かったのです。そんな彼が容疑を否認し始めたのは、やはり死刑が怖かったのでしょうか、それとも……!?

現実の事件をベースにしたドラマだけに、登場人物も多いのですが、山田信夫さんの脚本と吉川一義監督の演出によって、どのキャラクターからも「人間味」が感じられます。それゆえ、逆に浩二という人物の特殊性が浮き彫りになってくる構造で、仮に現実の事件の顛末を知っている人でも、ラストの展開はぎりぎりまで読めないのではないでしょうか。約40年前には、このような、志の高さを感じさせる2時間ドラマが少なくなかったのです。

丁寧に作られた本作の白眉は、すべての裁判が終わった後、被害者の母と容疑者の母が視線を交わすシーンでしょう。本コラムの前々回で採り上げた『女の中の風』における山岡久乃さんと加藤治子さんもそうでしたが、本作も、草笛光子さんと左幸子さんという2人の大女優の芝居が、作品にさらなる深みを与えています。表情の演技だけで、2人が苦しんできた時間の長さや、当事者同士にしか分からない複雑な心境などが、一気に伝わってくるのです。うっかりすると見逃してしまうような短いシーンですが、ぜひ、ご注目ください。

 

浩二役を繊細に演じてみせたのは、あの400勝投手・金田正一さんの息子としても知られる金田賢一さん。当時はまだ21歳でしたが、前年(1981年)に出演した映画『連合艦隊』では永島敏行さんや中井貴一さんとともに主要登場人物を好演するなど、注目を浴びていた存在でした。誘拐事件の被害者役の美池真理子さんは当時20歳。後の「池まり子」名義での活躍のほうをよく覚えているという方もいらっしゃることでしょう。この他、刑事役には天田俊明さん、山岡徹也さん。弁護士役に福岡正剛さん。裁判官役に幸田宗丸さん、野口元夫さんと、要所要所にベテランが配されています。

それでは、また次回へ。2月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第8回でご紹介した『魔少年』(監督:佐藤肇/出演:松尾嘉代、名古屋章ほか)、1980年の『傑作推理劇場』より『殺意』(原作:高木彬光/監督:野田幸男/出演:坂口良子、佐分利信ほか)、1979年の『土曜ワイド劇場』より『渓流釣り殺人事件~殺意の三面峡谷~』(監督:工藤栄一/出演:緒形拳、池上季実子、大坂志郎、夏樹陽子、西田健ほか)が放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

<放送日時>

『極刑』

2月2日(火)20:00~22:00

2月12日(金)13:00~15:00

2月28日(日)19:00~21:00

 

『魔少年』

2月5日(金)13:00~14:00

2月15日(月)14:00~15:00

 

『殺意』

2月11日(木)14:00~15:00

2月17日(水)14:00~15:00

 

『渓流釣り殺人事件~殺意の三面峡谷~』

2月19日(金)13:00~15:00

2021年1月28日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! あけましておめでとうございます。 今年は明るい年にしたい!

そんなことを願いながら迎えた新年。
かめぽんの住む関東圏は緊急事態宣言が再度出されそうな雲行き。年明けだ、明るく行こうと思っていたのだが、いきなりの訃報。東映時代劇ではお馴染みの福本清三さんが亡くなられた。福本さん、我が家では先生とお呼びする←「先生、お願いします」と言われ、主人公に立ち向かうがあっさりやられてしまう、そんな先生。かめぽんは祖母や父とよく時代劇を見ていたので、個性的な風貌で、派手に斬られる先生を愛して止まなかった。探偵ナイトスクープや徹子の部屋で有名になる前から、お、今日は先生出ていますかと先生チェックをしていた方はかめぽんだけではないはず。そんな愛される斬られ役。
最近はドラマでも度々お見かけし、お元気そうだなと思っていたのだが…
斬られ役が上手なほど、立ち回りが素晴らしく見える。時代劇の制作自体が少なくなる中、日本の文化を継承してくださる方がまた一人いなくなってしまった。本当に残念だ。

202101

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未だ日々の活動が制限される新しい生活様式の中、そんな日々を慰めてくれるのはエンターテインメントだ。
どうか、鬱々とした日常を東映作品で晴らしてほしい。
今月もヒーローものからサスペンス、任侠、アニメ、時代劇など盛りだくさん。
「赤穂浪士」には吉良の付け人で福本さんもご出演されているぞ。討ち入りに向けての怒涛の展開でスカッとしてほしい。
泣いたり、笑ったり、ハラハラしたり、感動したり…
そんな作品を今年もお届けします。

今年もわくわくな東映チャンネルをよろしくお願いします。

2021年1月5日 | カテゴリー: かめぽん