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むちゅー刑事
本名:ヒライズミ
棲息地(勤務地):「警視庁銀座懲怒街警察署刑事課
特徴:映画、ドラマに精通し、旨いメシ旨い酒にうるさい。
好きな言葉:「ドブネズミみたいに美しくなりたい」2026年8月 月 火 水 木 金 土 日 « 6月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 アーカイブ
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第25回『大東京四谷怪談』
今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1978年9月に放送された「土曜ワイド劇場」作品『大東京四谷怪談』をご紹介します。『土曜ワイド劇場』は、1978年7月から放送2年目に入りましたが、当時はまだ2時間枠ではなく、90分枠での放送でした。8月第3週、第4週には「夏の怪奇シリーズ」と題し、それぞれ『原色の蝶は見ていた 死の匂い』『怪奇!巨大蜘蛛の館』を放送。前者は西村寿行先生の原作で、脚本:山浦弘靖さん、監督:増村保造さんという『ザ・ガードマン』(65年)的な布陣。主演は由美かおるさんが務めました。後者は円谷プロのオリジナル作品で、キャストには小川知子さん、中山仁さんらが名を連ねています。
『大東京四谷怪談』は9月第1週の放送ということで、「夏の怪奇シリーズ」の冠こそ外れたものの、「怪奇シリーズ特選!」と題して放送されました。ちなみに、この時期、裏番組としては、夜9時台は民放各局ともにドラマを放送。日本テレビは水谷豊さん、大竹しのぶさんが主演の『オレの愛妻物語』、フジテレビは田宮二郎さん主演の『白い巨塔』、東京12チャンネル(現:テレビ東京)は里見浩太朗さん主演の『大江戸捜査網』、そしてTBSでは、丹波哲郎さん主演の『Gメン’75』が放送されていました。もし、この日にタイムスリップしたら「全部観たい!」という気持ちになりそうです。1978年なので、ビデオデッキすら、ほとんど普及していない時代ですが……。
さて、この『大東京四谷怪談』ですが、原作は「神津恭介」シリーズなどで知られる高木彬光先生。本作は「墨野隴人(すみの・ろうじん)」シリーズの第3作として1976年に発表された長編作品の映像化ですが、墨野隴人や村田和子といったキャラクターはそのまま登場するものの、原作からは、かなり大胆に改変されています。監督は、『プレイガール』(69~74年)などを経て、当時は『必殺』シリーズなどを手がけていた原田雄一さんが務めました(プロデューサーも『プレイガール』の大久保忠幸さんです)。
二宮柳子(富山真沙子)が何者かに暴行されたうえ、惨殺されるという事件が発生してから、1年が経とうとしていました。柳子は38歳でしたが、あまりの恐怖に直面したためか遺体は総白髪になっていました。
高田馬場で探偵事務所を営む村田和子(鰐淵晴子)は、亡くなった夫の親友でもあった清水(西沢利明)から、彼の親戚でもある柳子の殺人事件を調査してほしいという依頼を受けました。殺人事件を担当した経験のない和子は当初、頼れる存在である謎多き名探偵・墨野隴人(三橋達也)の協力を得ようと考えていましたが、あいにく墨野は仕事で海外へ出かけてしまっていました。そこで和子は清水とともに二宮家へ。ところが、まるで和子の到着を待っていたかのように、二宮家に関わる人々が謎の怪死を遂げていきます。最初は、巨漢の運転手(大前均)。そして、二宮家に出入りしていた蝋人形師の伊藤(太刀川寛)、さらには美術商の稲村(天草四郎)まで……。
やがて、清水を通じて和子に調査を依頼してきたのは、柳子の妹(二宮さよ子)であることがわかりました。そして浮かび上がってくる、あの「四谷怪談」との奇妙な類似点。稲村や伊藤が殺されたのは、本当に「お岩さん」の祟りなのでしょうか。そんなとき、二宮家へやってきた新たなお手伝い・竹中糸子(加山麗子)。彼女は、清水がかつて愛した女性・佐久間静子とそっくりでした――。
あらすじを細かく読んでくださっている方はそんなにいらっしゃらないだろうと思いつつ、今回は敢えて、時系列などを多少、崩した形で書いてみました。2時間枠の時代よりも尺が短い作品のため、短時間にいろいろなことが起こります。それだけテンポの良い作品なのですが、提示される情報量も多く、観る側はグイグイと引き込まれていくことでしょう。
“怪談”というだけあって、不気味な描写も全編にわたって登場します。実際の冒頭は、柳子が殺害される様子から幕を開けるのですが、さすが“昭和”のドラマだけあって、なかなかエグいです……。
墨野隴人には三橋達也さん、村田和子には鰐淵晴子さんというキャスティング。三橋さんは本作の翌年から『土曜ワイド劇場』では“十津川警部”となるので、ある意味、本作での墨野役はかなりレアだといえるでしょう。また鰐淵さんの和子は(陰惨な事件に直面しているにもかかわらず)ちょっとコミカルな一面を見せており、墨野とも息が合っていたので、このコンビでシリーズ化が実現していたら、けっこう面白くなっていたかもしれません。
本作のクライマックスは、幻想的な演出が印象に残ります。四谷ならぬ新宿を舞台に、錯乱していく真犯人(ネタバレになるため伏せますが、すでにあらすじの中に登場しているので、予想してください)の姿にご注目ください。また、「お岩さん」の声として出演しているのは、当時『魔女っ子チックル』(78年)のチックル、『未来少年コナン』(78年)のモンスリーなどを演じていた、売れっ子声優の吉田理保子さん。劇中、どのタイミングで、どんな形で「お岩さん」が声を発するのかは、観てのお楽しみということで……。
それでは、また次回へ。3月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第9回でご紹介した『消えた男』(監督:堀川弘通/出演:緒形拳、秋吉久美子、中条静夫ほか)、1980年の『傑作推理劇場』より『尊属殺人事件』(出演:辰巳柳太郎、浅茅陽子、浜村純、菅井きん、風見章子ほか)が放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください。
文/伊東叶多(Light Army)
<放送日時>
『大東京四谷怪談』
3月8日(月)13:30~15:00
3月18日(木)21:30~23:00
3月26日(金)18:30~20:00
『消えた男』
3月5日(金)14:00~15:00
3月20日(土)12:30~13:30
『尊属殺人事件』
3月6日(土)12:30~13:30
2021年2月22日
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その他
チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第24回『極刑』
今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1982年11月に放送された「火曜サスペンス劇場」作品『極刑』をご紹介します。この作品は、推理作家・ノンフィクション作家の福田洋先生が1981年に発表した『極刑 女流デザイナー誘拐殺人事件』を原作として、映画『華麗なる一族』(74年)、『不毛地帯』(76年)など骨太な作品を手がけてきた山田信夫さんが脚本化し、近年も水谷豊さん主演の『無用庵隠居奉行』シリーズなどを担当している吉川一義さんが監督を務めた作品です。
『極刑 女流デザイナー誘拐殺人事件』の題材となったのは、1965年に新潟県で発生した「新潟デザイナー誘拐殺人事件」でした。ドラマ版『極刑』も、かなり事実に基づいた描写がなされていますが、事件の舞台は新潟県新潟市から、群馬県高崎市へと変更されていました。
ある晩、群馬県高崎市に住む若い女性・高森由利子(美池真理子)が何者かによって誘拐されました。犯人が高森家に対して要求してきた身代金は、なんと2000万円。由利子の母である信子(左幸子)は、息子夫婦(住吉正博/早川絵美)とも相談し、警察に連絡を入れました。早速、大勢の捜査員が配備される中、信子たちは身代金を犯人に渡すべく、高崎駅へと向かいます。ところが犯人は、信子に対し、電車に乗って、指定の地点で窓から金を投げ落とすよう、指示を変更。信子はこれに従いますが、緊張と焦りで、うまく電車の窓を開けることができず、金を投げ落とすことはできませんでした。
落胆する信子たち。警察は「身代金を手に入れるまでは、犯人は人質を手にかけないはずだ」と気休めを言いますが、その後、間もなく、由利子は遺体となって発見されました。しかも、解剖の結果、由利子は身代金の受け渡し時刻より前に殺害されていたことが判明。あまりにも残酷な犯人の手口に、このニュースを知った人々は戦慄します。高森家と付き合いのあった、中古車販売業を営む寺尾俊平(垂水悟郎)とツネ(草笛光子)の夫婦も、例外ではありませんでした。いえ、むしろ近しい間柄だけに、ツネはこの事件を、他人事とは思えないほど、心を痛めていたのです。
しかし、ツネにとって全く想定外の事態が待ち受けていました。なんと、ツネの息子である浩二(金田賢一)が、この事件の容疑者として逮捕され、犯行を自供したのです。寺尾家に向けられる、世間からの非難。それでもツネは、息子が犯人だとは思えませんでした。浩二を信じ続けようとするツネでしたが、接見しても、なぜか浩二は口を閉ざします。そして担当検事(佐古雅誉)はツネに、浩二の前で彼の妻(立石凉子)の名前を出さないように釘を差しました。妻の名前を出すと、浩二が取り乱してしまうから、だそうです。ツネは腑に落ちませんでしたが、これに従うことにしました。
やがて浩二は、裁判で極刑である「死刑」を求刑されます。これには世間も納得。しかしツネの思いは変わりません。そんなとき、浩二が公判中に突如として容疑を否認。彼が初めて語った事件の全貌は、かなり具体的なものでした。もし浩二の証言が事実なら、彼は誘拐にこそ関わっていたものの、あくまで主犯グループに脅迫され、命じられるままに動いていたことになります。果たして、浩二が言うところの「リュウ」、そして「高橋」という人物は存在するのでしょうか。息子の死刑を阻止すべく、ツネは執念の調査を続けますが――。
というわけで、「浩二が真犯人なのか?」という点が、物語の主眼です。ただ、あらすじにも記した通り、浩二の態度には当初、特に不審な点が多かったのです。そんな彼が容疑を否認し始めたのは、やはり死刑が怖かったのでしょうか、それとも……!?
現実の事件をベースにしたドラマだけに、登場人物も多いのですが、山田信夫さんの脚本と吉川一義監督の演出によって、どのキャラクターからも「人間味」が感じられます。それゆえ、逆に浩二という人物の特殊性が浮き彫りになってくる構造で、仮に現実の事件の顛末を知っている人でも、ラストの展開はぎりぎりまで読めないのではないでしょうか。約40年前には、このような、志の高さを感じさせる2時間ドラマが少なくなかったのです。
丁寧に作られた本作の白眉は、すべての裁判が終わった後、被害者の母と容疑者の母が視線を交わすシーンでしょう。本コラムの前々回で採り上げた『女の中の風』における山岡久乃さんと加藤治子さんもそうでしたが、本作も、草笛光子さんと左幸子さんという2人の大女優の芝居が、作品にさらなる深みを与えています。表情の演技だけで、2人が苦しんできた時間の長さや、当事者同士にしか分からない複雑な心境などが、一気に伝わってくるのです。うっかりすると見逃してしまうような短いシーンですが、ぜひ、ご注目ください。
浩二役を繊細に演じてみせたのは、あの400勝投手・金田正一さんの息子としても知られる金田賢一さん。当時はまだ21歳でしたが、前年(1981年)に出演した映画『連合艦隊』では永島敏行さんや中井貴一さんとともに主要登場人物を好演するなど、注目を浴びていた存在でした。誘拐事件の被害者役の美池真理子さんは当時20歳。後の「池まり子」名義での活躍のほうをよく覚えているという方もいらっしゃることでしょう。この他、刑事役には天田俊明さん、山岡徹也さん。弁護士役に福岡正剛さん。裁判官役に幸田宗丸さん、野口元夫さんと、要所要所にベテランが配されています。
それでは、また次回へ。2月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第8回でご紹介した『魔少年』(監督:佐藤肇/出演:松尾嘉代、名古屋章ほか)、1980年の『傑作推理劇場』より『殺意』(原作:高木彬光/監督:野田幸男/出演:坂口良子、佐分利信ほか)、1979年の『土曜ワイド劇場』より『渓流釣り殺人事件~殺意の三面峡谷~』(監督:工藤栄一/出演:緒形拳、池上季実子、大坂志郎、夏樹陽子、西田健ほか)が放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください。
文/伊東叶多(Light Army)
<放送日時>
『極刑』
2月2日(火)20:00~22:00
2月12日(金)13:00~15:00
2月28日(日)19:00~21:00
『魔少年』
2月5日(金)13:00~14:00
2月15日(月)14:00~15:00
『殺意』
2月11日(木)14:00~15:00
2月17日(水)14:00~15:00
『渓流釣り殺人事件~殺意の三面峡谷~』
2月19日(金)13:00~15:00
2021年1月28日
カテゴリー: その他
その他
チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第23回『女が見ていた』
今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1983年1月に放送された「火曜サスペンス劇場」作品『女が見ていた』をご紹介します。横溝正史先生の長編推理小説にも同タイトルの作品がありますが、こちらは脚本家・池田一朗先生による完全オリジナル。池田先生は1984年からは時代小説家・隆慶一郎としての執筆活動がメインとなるため、本作は脚本家専業としては晩年の仕事ということになります。監督は『Gメン’75』(75年)で、第1話をはじめとする傑作エピソードを多く手がけた鷹森立一さんが務めています。
1982年も、間もなく終わろうとしていました。都心の大手企業の庶務課に勤務している真山京子(泉ピン子)は、とても見栄っ張りな女性。それゆえ上司や同僚たちからも嫌われていたのですが、本人は「どこ吹く風」で、全く気にしていませんでした。
仕事納めの日、京子は冬に似つかわしくない格好で出社します。どうやら、彼女は年末年始をニューカレドニアで過ごすことを、周囲に自慢したかったようです。課長(長沢大)をはじめとする庶務課の面々は、そんな京子のことが鬱陶しくて仕方ないのですが、係長(河原崎長一郎)だけは、京子に対して優しく接していました。
さて――ここから京子の旅行が始まる……と思いきや、彼女の発言はすべてウソでした。倹約家でもある京子にとっては、海外で散財するなんて、あり得ないこと。同僚たちに見栄を張りたかっただけで、年末年始はマンションに引きこもって暮らすことを決めていたのです。約1週間、外へ一歩も出なくて済むよう、準備を済ませた京子。管理人(正司花江)にまでウソをついて、彼女の孤独な正月休みがスタートしました。
ところが不運なことに、京子の部屋のテレビが故障してしまいます。本格的な休みの初日にして、京子はヒマを持て余すことになりました。そんなとき、彼女は隣の住人・桑田友子宛てに届いた荷物を、代わりに受け取っていたことを思い出します。それは望遠鏡でした。京子は出来心で、望遠鏡を使って向かいのマンションの「覗き」を開始。すると、ある部屋で激しい「家庭内暴力」が行われているのを目撃したのです。
この「家庭内暴力」は、やがて殺人事件へと発展しました。「覗き」行為によって目撃者となった京子は迷った末、匿名で警察に電話します。「家庭内暴力の末、父親が息子を殺した」と。しかし、これは京子の誤認でした。警察が、当の野沢家へ確認に行くと、母親(高田敏江)と、“殺された”はずの息子(長谷川裕二)が出てきたのです。
警察をからかった、単なるイタズラかと思われました。しかし、警察が帰った後、それまで平静を装っていた母親と息子は、動揺を隠しきれなくなりました。なぜなら、被害者が異なっているだけで、「殺人事件」は実際に起こっていたからです。「父親が息子を殺した」のではなく、事実はその逆でした……!
目撃者である主人公・京子が、その「見栄」のため、名乗り出られないという状況。これが見間違えでなければ、おそらく事件はここで解決していたのですが、誤認だったことで、事態は予想外の方向へ展開していきます。「見られた」母子としては「目撃者」を見つけ出したいわけですが、「見られる」可能性は限られていますから、早い段階で、母子は方法が「覗き」であると確信。しかも、年末年始ゆえ、母子がターゲットを定めるには、それほど時間がかかりませんでした。
ある意味で「自業自得」とも言える“恐怖の日々”を送ることになってしまった主人公を当時35歳の泉ピン子さんが好演。1980年代に入り、主演作も増えていたピン子さんですが、本作の放送から3ヶ月後にスタートしたNHK朝の連続テレビ小説『おしん』(83年)への出演により、押しも押されもしないトップ女優としての地位を完全に確立したと言えるでしょう。本作では、京子が事件を目撃するまでの描写に時間が割かれており、前半はピン子さんの「一人芝居」を観ているような感覚に陥りますが、むしろ、その構成が本作の独特な面白さを生んでいました。
息子を溺愛する母親役の高田敏江さんは、さまざまなテレビドラマで母親役を演じてきたベテラン。本作に近い時期で言えば、やはり『3年B組金八先生』第1シリーズにおける宮沢保(鶴見辰吾)の母親役が印象的です。2020年もNHK BSプレミアム『すぐ死ぬんだから』に出演されるなど、健在ぶりを示しています。登場が後半のため、ストーリー紹介部分では触れられませんでしたが、本作の刑事役は藤巻潤さんと木村元さん。藤巻さんは同時期、夜7時台のアクションドラマ『魔拳!カンフーチェン』(83年)にも出演されていました。
それでは、また次回へ。1月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第7回でご紹介した『観覧車は見ていた』(脚本:高久進/監督:鷹森立一/出演:市毛良枝、丹波哲郎ほか)、1981年の『火曜サスペンス劇場』より『ハムレットは行方不明』(原作:赤川次郎/監督:村川透/出演:宮崎美子、柴田恭兵ほか)、1984年の『土曜ワイド劇場』より『授業参観の女』(監督:野田幸男/出演:緒形拳、萬田久子、伊東四朗ほか)、1982年の『土曜ワイド劇場』より『透明な季節』(監督:藤田敏八/出演:芦川誠、石橋蓮司、中村嘉葎雄、中野良子、田村高廣、泉谷しげる、佐久田修ほか)が放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください。
【1月の『刑事くん』(第2シリーズ)】
1月、ついに『刑事くん』(第2シリーズ)も最終回(第55話)を迎えます――。
第55話「限りなき希望の道へ」(脚本:長坂秀佳/監督:竹本弘一)
三神刑事の上司・時村(名古屋章)宛てに、脅迫電話がかかってきました。その電話をとった三神は、時村を危険な目に遭わせるわけにいかないと、自ら時村になりすまして、電話の主が指定した場所へ向かいました。すると、そこで射殺事件が発生。殺された人物が三神(時村)と間違われて被害に遭ったことは明白でした。脅迫者はどうやら、本気で時村の命を狙っているようです。三神はこのまま、自分が時村の身代わりになって、脅迫者に立ち向かうことを決意しました。
宗方刑事(三浦友和)の捜査により、脅迫者の正体が判明したころ、三神は再び、呼び出しを受けて指定された場所へと向かっていました。経緯を知った時村は三神を死なせるまいと、必死で三神の行方を追います。しかし、その思いも及ばず、三神は凶弾に倒れたのでした。
「退職」で終わった第1シリーズに続き、第2シリーズは「殉職」で終わるのか? ぜひ、映像で結末をお確かめください。
1971年9月にスタートした第1シリーズは1年間にわたって続き、同じく桜木健一さんが主演の時代劇『熱血猿飛佐助』(2クール)を挟んで、第2シリーズも1年間の放送となりました。実に2年半(正確には2年8ヶ月)もの間、桜木さんはTBS月曜夜7時30分~8時の「ブラザー劇場」枠で、主演として活躍したわけです。「ブラザー劇場」から生まれたドラマ作品の中でも、屈指の人気を誇った『刑事くん』だけに、ここで終わってしまってはもったいないと、関係者の誰もが当時、思ったはず。と、なると第2シリーズの結末も想像がつきそうですが、ここでは敢えて、はっきり触れないでおくことにしましょう。
それにしても、『刑事くん』は今年で放映開始から50周年なんですね。そうすると、2022年には『熱血猿飛佐助』も50周年を迎えます。そろそろ観たいところなんですが、どうにかならないでしょうか……?
文/伊東叶多(Light Army)
<放送日時>
『女が見ていた』
1月8日(金)11:00~13:00
1月12日(火)20:00~22:00
1月26日(火)22:00~24:00
1月29日(金)13:00~15:00
『観覧車は見ていた』
1月15日(金)13:00~15:00
1月26日(火)20:00~22:00
『ハムレットは行方不明』
1月1日(金)13:00~15:00
1月19日(火)20:00~22:00
『授業参観の女』
1月9日(土)17:00~18:50
1月22日(金)13:00~15:00
『透明な季節』
1月8日(金)13:00~15:00
1月16日(土)17:00~19:00
『刑事くん』(第2シリーズ)
1月4日(月)18:00~18:30 最終回放送!
再放送:毎週金曜日7:00~8:00(2話ずつ放送/1月15日にて終了)
2020年12月25日
カテゴリー: その他
その他
チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第22回『女の中の風』
今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1988年の「火曜サスペンス劇場」作品より、『女の中の風』をご紹介します。原作は、『白の条件』や『てっぺん』などがテレビドラマ化したことでも知られる、万里村奈加先生が1985年に発表した『黒のミラージュ』(全3巻)。ヒロインをはじめとする主要な登場人物の名称や、ヒロインの境遇などは基本的に原作通りですが、それ以外の部分は大幅に脚色されています。
母・みね子(加藤治子)とともに苦労しながら母子家庭で育ってきた圭子(浅野ゆう子)にも、ついに幸せが訪れようとしていました。大企業・時任物産の御曹司で、若くして専務を務めている和彦(五代高之)との結婚が決まったのです。和彦の父で社長の義彦(永井秀明)も、半身不随で寝たきりの母・靜子(山岡久乃)も、息子の結婚を喜んでいました。
しかし、時を同じくして、一つの奇妙な事件が発生しました。本田政男(伊原剛志)という男が、駅のホームから転落、轢死したのです。転落の直前、ホームでは突然、空から降ってきた一万円札に誰もが群がり、本田の転落の状況を誰も目撃していませんでした。
事件は当初、他の人々と同様に一万円札を拾おうとして、本田も謝って転落したものと思われました。しかし、城北署の山崎刑事(横光克彦)らの捜査で、当時の風向きから考えると本田の転落には不審な点があることが判明。山崎刑事は、事故に見せかけた殺人の可能性も考慮に入れ、本格的な捜査を開始しました。本田の遺品の中で、山崎の目に留まったのは本田の高校時代の集合写真。○印が付けられていた女性は時任和彦と結婚したばかりの圭子でした。
これがきっかけとなり、山崎は圭子に注目します。長い苦節を経て、幸せを手に入れたはずの圭子は、どうやら本田に何らかの事情で、強請られていたようでした。そして、圭子は気づいていませんでしたが、夫・和彦もまた、素行調査によって、圭子と本田の秘密に辿り着いていました。和彦から離婚を切り出された圭子は――。
隠したい過去、守りたい幸せを持った女性が犯罪に走っていく……。2時間ドラマでは、ひとつの定番と言えるプロットですが、本作は中盤以降、物語がより深みを増していくという点で、多くの2時間ドラマとは一線を画す仕上がりになっています。
いくつかのキーワードが劇中に登場しますが、そのひとつは、タイトルにも入っている“風”です。圭子の思惑通り、本田の件は事故という結論で捜査が終了するのですが、納得のいかない山崎刑事は、犯罪者の心の中には風が吹くのだと、圭子に告げました。それは、完全犯罪など成立し得ないという、山崎の信念から出た言葉。自分は何度も、さまざまな風に耐えてきたと山崎に言い返す圭子でしたが、やがて圭子は山崎が言った通り、心の中に風が吹く瞬間を感じることになります。
そして、もうひとつ印象的なのは、“1%の可能性”というキーワード。圭子は、半身不随で歩くことが不可能な靜子に対して、靴をプレゼントします。この行動には、靜子の夫である義彦も動転しました。しかし、圭子は靜子の担当医にも確認したうえで、「1%の歩ける可能性に賭けてほしい」と、プレゼントに靴を選んだのです。これによって、圭子は靜子からの信頼を勝ち取りました。
ところが、やがて靜子は圭子の「正体」を知ってしまいます。圭子によって、息子と夫を失った靜子は、かつて圭子が自分に言った“1%の可能性”という言葉を使って、圭子を精神的に追いつめていくのでした。このあたり、山岡久乃さんという大女優を、設定上、全く動くことができない役どころに配置した狙いが、最大限に活かされています。本来なら、圭子にとって、いろいろな意味で「敵」ではないはずの靜子が、意外な形で「最大の敵」となってくる構成には、驚かされることでしょう。
また、圭子の母・みね子も、物語の中で大きな役割を果たします。こちらを演じているのは加藤治子さん。山岡久乃さんの靜子とは違った形で、自分の娘・圭子に影響を与えるのです。この2大女優の圧倒的な存在感は、すべてが「終わった」後のラストシーンでも示されるので、ぜひ、実際の映像でご確認ください。
主演を務めたのは浅野ゆう子さん。本作が放送された当時(1988年2月)は、フジテレビで『君の瞳をタイホする!』、TBSで『愛と復讐の海』と、2本の主演ドラマが放送中でした。つい先日、BSフジで放送された、80年代を振り返るスペシャル番組において、『君の瞳を~』で浅野さんと共演した陣内孝則さんが語っていたところでは、当時の浅野さんは『君の瞳を~』のような作品(いわゆる“トレンディドラマ”)より、『愛と復讐の海』のようなシリアスなドラマのほうを中心に活動したいという意向だったそうな。しかし、実際には、『君の瞳を~』に続き、88年7月からスタートしたフジテレビ『抱きしめたい!』で浅野温子さんとダブル主演した浅野ゆう子さんは、トレンディドラマの女王として、一時代を築いていくことになります。
このほか、大企業の御曹司・和彦を演じた五代高之さんは、本作の直後(88年4月)にスタートしたフジテレビ『教師びんびん物語』にレギュラー出演。紺野美沙子さん演じるヒロインをめぐり、主演の田原俊彦さんと三角関係になっていく役柄を好演しました。また、山崎刑事役の横光克彦さんは、本作の1年前まで、9年間にわたって『特捜最前線』に紅林刑事役でレギュラー出演。本作は、『特捜』の紅林編の1本として観ても成立しそうなくらい、山崎刑事の立ち位置が重要なものになっています。そして、冒頭であっさり死んでしまう本田役は、ブレイク前の伊原剛志さん。90年代に入ってから快進撃が始まりますが、80年代はまだ、あまり目立った活躍がありませんでした。そのキャリアの初期、ジャパンアクションクラブ(JAC、現:JAE)に所属されていたことも、いまでは知る人が少なくなっているかもしれません……。
それでは、また次回へ。12月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第6回でご紹介した『超高層ホテル殺人事件』(原作:森村誠一/主演:田村正和)、1984年の『火曜サスペンス劇場』より『行きずりの殺意』(原作:森村誠一/出演:浜木綿子、松尾嘉代ほか)、1982年の『火曜サスペンス劇場』より『たそがれに標的を撃て』(監督:鷹森立一/主演:菅原文太)が放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください。
【12月の『刑事くん』(第2シリーズ)】
12月、新登場となるエピソードは第47話から第54話まで。第2シリーズは全55話なので、いよいよ大詰めとなってきました。
今回は第48話「爆発一秒前」をご紹介します。
第48話「爆発一秒前」(脚本:長坂秀佳/監督:富田義治)
ある喫茶店で、宗方刑事(三浦友和)は三神刑事(桜木健一)が到着するのを待っていました。そんなとき、その店で爆発が発生。宗方も巻き込まれて、重傷を負ってしまいます。被害者の中に刑事=宗方がいたことから、本庁から派遣されたベテラン刑事(高野真二)は犯人が宗方を狙ったものだと推理。しかし、三神はこの意見に、真っ向から対立するのでした。
宗方の容態を案じつつも、独自の捜査を続け、やがて有力な容疑者・山室に辿り着いた三神。彼の動機は、喫茶店のウエイトレス(菅沢恵美子)への逆恨みでした。三神は山室を城南署へ連行しますが、なぜか山室は、自分を「取調室へ連れて行け」と、取り調べを受ける「場所」に異様にこだわります。その必死さに違和感を抱いた三神は――。
冒頭も爆弾、クライマックスも爆弾(あ、ちょっとネタバレっぽいですが……)という、長坂秀佳さんらしい一編。『刑事くん』を経て、後の『特捜最前線』では、原子爆弾やバリコン爆弾、コンピュータ爆弾などを次々と登場させ、“バクダンのナガサカ”という異名を取りました。
ウエイトレス役の菅沢恵美子さんは、第32話「めぐり逢う日まで」において、ポスターで微笑む美女を演じていました。美女に恋した少年や、三神刑事の想像とは違い、この美女は性格的には……だったというオチがつくのですが。
今回、再出演を果たした菅沢さんですが、当時は東映演技研修所の所属で、仮面ライダーシリーズなど、東映のテレビ作品に数多く出演されていました。そして、本作の放送から約5ヶ月後に公開された映画『女必殺拳』の準主役・早川絵美役に抜擢され、少林寺拳法初段の腕前を活かして活躍。これを機に、芸名も役名と同じ“早川絵美”に改めました。
その後も『ザ・カゲスター』(76年)のベルスター=風村鈴子役などを演じた早川さんは1978年、『特捜最前線』にゲスト出演。ここで出逢った俳優の誠直也さんと結婚し、現在に至っています。
……さて、1月の新規エピソードは、残る第55話(最終回)のみ。第1シリーズの最終回は三神刑事の「辞職」で幕を閉じましたが、果たして第2シリーズの結末は?
文/伊東叶多(Light Army)
<放送日時>
『女の中の風』
12月8日(火)11:00~13:00
12月22日(火)20:00~21:50
12月28日(月)11:00~13:00
『超高層ホテル殺人事件』
12月19日(土)21:00~23:00
『行きずりの殺意』
12月22日(火)13:00~15:00
『たそがれに標的を撃て』
12月29日(火)20:00~21:50
『刑事くん』(第2シリーズ)
毎週月曜日18:00~19:00(2話ずつ放送)
再放送:毎週金曜日7:00~8:00
『刑事くん』(第1シリーズ)
第57話(最終回)「人間たちの祭り」
12月3日(木)19:00~19:30放送!
2020年11月30日
カテゴリー: その他
その他
チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第21回『恋人交換殺人事件』
今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1982年の「土曜ワイド劇場」作品より、『恋人交換殺人事件』をご紹介します。この作品の原作は、赤川次郎先生。原作タイトルが「死体置場で夕食を」だといえば、ミステリーファンの方は「あぁ、あれか!」と思い当たるのではないでしょうか。同作は、1970年代末に『三毛猫ホームズ』シリーズなどで脚光を浴び始めた赤川先生が、1980年に発表した作品。多作ゆえ「シリーズもの」の印象が強い赤川先生ですが、同作は非シリーズながらも長く読まれており、2016年にも新装版が発行されました。
「土曜ワイド劇場」では、赤川先生の作品の映像化にいち早く着手していました。『幽霊シリーズ』の第1作『幽霊列車』は、なんと岡本喜八監督が手がけて、1978年1月に放送。そして『三毛猫ホームズ』は製作:東映、主演:石立鉄男という布陣でシリーズ化され、1979年から1984年まで、1年に1作のペースで放送されました。
そんな中、映画『セーラー服と機関銃』(81年)の大ヒットもあり、赤川先生は時代の寵児となっていきます。『恋人交換殺人事件』は82年2月の放送ですから、タイミングもバッチリだったといえるでしょう。監督は、『三毛猫ホームズ』第1作を担当した手銭弘喜さん。なお82年2月というと、あの「ホテルニュージャパン火災」(8日)や、日本航空350便墜落事故(9日/エンジンの逆噴射が原因となったことで知られる)が起こった時期でした。
カメラマンの紺野芳子(池上季実子)は婚約者で雑誌編集の仕事をしている糸井洋一(小倉一郎/※原作では洋一と芳子は夫婦の設定です)と一緒に猪苗代まで冬のドライブへと出かけました。しかし猛吹雪に見舞われ、洋一の運転する車は道に迷ってしまいます。それ以上は動けなくなった2人でしたが、運良く付近にロッジを見つけました。2人が訪ねて行くと、管理人の福原(三谷昇)は、泊まっていって構わないと彼らを歓迎します。そのロッジには、たくさんの先客がいました。ロッジのオーナーであるらしい安西(佐伯徹)とその妻(弓恵子)、運送業を営んでいるという太田(出光元)とその妻(高沢順子)、ホテル開発業を自称する湯川(藤木敬士)、そして田代美奈子(片桐夕子)。6人は、みなそれぞれ旧知の間柄のようでした。彼らは集まって談笑しており、「ご一緒に」と誘われた芳子でしたが、さすがに疲れているので、すぐに部屋で眠ることにしました。
しかし、一夜明けると、なぜかロッジには誰もいませんでした。先客たちどころか、管理人の福原も、さらには婚約者の洋一も……。当惑した芳子は、なんとか最寄りの交番まで辿り着いて、老警官(相馬剛三)に事情を説明しました。急遽、ヘリコプターが出動し、ロッジの様子を空から確認することに。ところが、なんとロッジは全焼。焼け跡からは、ひとりの男性の遺体が発見されました。やがて、その遺体は洋一である可能性が高いと聞いた芳子は悲嘆にくれます。いったい、どうしてこんなことになったのでしょうか。芳子は、猪苗代で知り合った元・刑事の瀬川(柴俊夫)とともに、ロッジにいた先客たちの行方を調べ始めますが……。
副題が「雪山に消えた七人」となっているように、序盤で奇想天外なトリックを読者(視聴者)に対して仕掛け、作品の世界へ否応なく引きずり込んでいくテクニックはいかにも、赤川先生的です。事件関係者を演じる面々がまた、クセの強い俳優・女優さんばかりで、殺人事件なのに、なんだか楽しく(?)なってしまう部分があるのも、赤川作品ならではのことでしょう。メインタイトルが『恋人交換殺人事件』なので、察しの良い方は、ロッジに集まっていた6人の「目的」にもすぐに気づくと思いますが、そのあたりは劇中でも早めに明かされるため、以降は「事件の真相」に焦点が絞られていきます。
しかし、物語が進んでも、なかなか風呂敷を畳みにいかないのが赤川作品の特徴。あっと驚く「新キャラ」が中盤で登場したり、意外な「伏兵」が現れたりと、飽きさせない作りになっています。ラスト10分くらいまでは「ホントに事件解決するの?」と心配になりますが、そこからの怒涛の展開にご期待ください。後の2時間ドラマが陥っていったような、クドい説明を省いている点が、この時代の2時間ドラマの良さ。「ながら見」をしている視聴者ではなく、作品を食い入るように観ている視聴者のほうをしっかり向いて作られたものは、やっぱり面白いです。もちろん、本作においても、いくつか「?」となるような強引な箇所は存在しますが、その点だけをあげつらって作品に低評価を下すのは、実にナンセンスなことでしょう。ちなみに、本作で使用されているブリッジ曲や効果音の類は、後の『スケバン刑事』シリーズ(85~88年)でも頻繁に使用されているため、そちらのほうで聴き馴染んでいる方が多いのではないでしょうか。効果:原田千昭さん、選曲:秋本彰さんは『ザ・スーパーガール』(79年)などを担当後、本作を経て『スケバン刑事』シリーズでもタッグを組んでいました。
あらすじで紹介できなかったキャストでは、刑事役の名古屋章さんが安定した演技を見せています。時期的にはちょうど、石立鉄男さんとの丁々発止のやりとりが好評を得ていた『秘密のデカちゃん』(81年)が終わったあたりでしょうか。80年代の名古屋さんは一連の「大映テレビ」作品において、常に最重要キャストのひとりでした。
柴俊夫さんは、主演を務めたNHK時代劇『いのち燃ゆ』(81年)が終わったあたり。『西部警察PART-Ⅲ』(83年)で、三浦友和さんの後釜としてレギュラー入りするのは、本作の翌年のことでした。そしてヒロイン役の池上季実子さんはやはり前年のNHK大河ドラマ『おんな太閤記』(81年)で豊臣秀吉の側室・淀殿を演じ終えたばかり。翌年には代表作のひとつとなる映画『陽暉楼』(83年)に出演されました。池上さん、柴さん、名古屋さんといったスターたちの絶頂期の仕事としても本作は見応えがあります。この機会にぜひご覧になってください。
それでは、また次回へ。11月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第5回でご紹介した『0計画(ゼロプラン)を阻止せよ』(原作:西村京太郎/出演:黒沢年男、児玉清ほか)、1983年の『火曜サスペンス劇場』より『夕陽よ止まれ』(監督:吉川一義/出演:丹波哲郎、紺野美沙子、野際陽子ほか)が放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください。
【11月の『刑事くん』(第2シリーズ)】
11月、新登場となるエピソードは第37話から第46話まで。その中から、今回は第43話「お父さんとのデート」をご紹介します。
第43話「お父さんとのデート」(監督:竹本弘一)
城南署で燻し銀の存在感を放つベテラン刑事「島さん」こと島崎刑事(守屋俊志)が、珍しく捜査情報を漏らすというミスを犯しました。そのため島崎刑事は、娘(遠藤薫)との約束を破って捜査に打ち込みます。ところが、そんな島崎刑事が暴力団に拉致されてしまいました。暴力団から呼び出された三神刑事(桜木健一)は、島崎を解放する代わりに、警察が集めた情報を提供せよと迫られます。仕方なく、これを了承した三神でしたが、上司である時村(名古屋章)や、同僚の宗方刑事(三浦友和)の目を盗んで捜査関係書類を持ち出すのは困難でした。しかし、このままでは島さんの命が危険です。そこで三神は、強引に書類を持ち出しましたが……。
第1シリーズの第1話から登場している「島さん」にスポットを当てたエピソード。本作のメインライターを務める長坂秀佳さんならではの視点が活かされた一編だといえるでしょう。ただ、30分ドラマということもあり、中盤はずっと拉致されたまま、というのが残念。1時間ドラマならば、「島さん」の心の葛藤がもう少し描き込まれていた気がします。「島さん」役の守屋俊志さんは結局、『刑事くん』には名古屋章さんとともに最終シリーズまで出演。さらに、本作と同じ枠で後に放送された『刑事犬カール』(77年)においても、刑事役で出演されていました。
悪役でゲスト出演しているのは幸田宗丸さんと黒部進さん。この2ショットを観て、なんだか既視感があるなぁと思っていたら、後の『スケバン刑事』(85年)第4話「白い炎に地獄を見た!」でも、2人は同じような役回り(幸田さんの配下の役が黒部さん)で出演されていたのでした。そして、なんと、その回では守屋さんも登場(クレジットは「守谷」となっていましたが)。ただし、こちらでの守屋さんは刑事役ではなく、幸田さんや黒部さんと同じく、悪役の側でした。
「島さん」の娘を演じているのは、70年代の東映テレビ作品に数多くゲスト出演していた子役の遠藤薫さん。なぜか長坂さんの脚本作品への出演が多く、具体的には『人造人間キカイダー』(72年/第31・32話)、『仮面ライダーX』(74年/第7話)、『快傑ズバット』(77年/第19話)といった具合です。
いよいよ、第2シリーズも終盤戦。11月末までの放送を終えると、残り9話となります。今後も引き続き、“刑事くん”の活躍にご期待ください。
文/伊東叶多(Light Army)
<放送日時>
『恋人交換殺人事件』
11月7日(土)18:00~20:00
11月14日(土)20:30~22:30
11月24日(火)13:00~15:00
『0計画(ゼロプラン)を阻止せよ』
11月7日(土)20:00~22:00
『夕陽よ止まれ』
11月24日(火)20:00~22:00
『刑事くん』(第2シリーズ)
毎週月曜日18:00~19:00(2話ずつ放送)
再放送:毎週金曜日7:00~8:00
『刑事くん』(第1シリーズ)
毎週木曜日19:00~20:00(2話ずつ放送)
2020年10月20日
カテゴリー: その他
その他
チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第20回『花園の迷宮』
今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1988年の「火曜サスペンス劇場」作品より、『花園の迷宮』をご紹介します。この作品の原作は、山崎洋子先生。1986年の第32回「江戸川乱歩賞」受賞作にして、山崎先生の代表作です。ちなみに、1985年(第31回)の受賞者のひとりが、東野圭吾先生でした。
昭和初期の遊郭を舞台にした本作は大きな注目を浴び、映像化の企画が進められていきます。まずは1988年1月、映画版が公開されました。伊藤俊也監督がメガホンをとり、撮影を木村大作さんが担当。東映京都撮影所には舞台となる遊郭の豪華セットが建てられました(美術は「映像京都」代表を長きにわたって務めながら、数多くの映画で美術監督として手腕をふるった西岡善信さん)。主演は島田陽子さん(多恵役)。原作の主人公にあたる冬実(ふみ)役は工藤夕貴さんが演じ、冬実の幼なじみ・美津役は、ここでは冬実の姉という設定に改変され、野村真美さんが演じました。
ここまでの説明からも想像がつくかもしれませんが、映画版は原作から時代設定なども変更されるなど、比較的オリジナル要素が強い作品となっていました。
それに対し、映画公開の約2ヶ月後に放送されたテレビドラマ版のほうは、細部こそ異なるものの、大筋は原作に忠実だったといえるでしょう。あくまで『火サス』枠ではありますが、「日本テレビ開局35周年企画」という冠が付けられるなど、日本テレビ&東映が力を入れた作品だったことは間違いありません。監督は映画『戦国自衛隊』(79年)や、テレビドラマ『俺たちの旅』(75年)などで知られる斎藤光正さん。主演はNHK朝の連続テレビ小説『はね駒』(86年)で国民的人気女優となり、映画『恋する女たち』(86年)や『トットチャンネル』(87年)、舞台『レ・ミゼラブル』(87年)などでも好評を博していた斉藤由貴さんが務めました。斉藤さんといえば、東映ファンにとってはなんといっても『スケバン刑事』(85年)が印象深いところですが、東京と京都で撮影所こそ違っていたものの、斉藤さんにとって本作は『スケバン刑事』以来の東映作品だったことになります。
昭和7年(1932年)、横浜の遊郭「福寿」に、若狭の小さな漁村から、2人の少女が売られてきました。すでに18歳になっていた美津(小野沢智子)のほうは早速、女主人・多恵(岡田茉莉子)の意向もあって「顔見世」に出されることになりましたが、まだ17歳だったふみ(斉藤由貴)はしばらく、下働きを務めることになりました。
そのうちに、ふみは病気療養中の女郎・山吹(竹井みどり)の看護を命じられました。しかし、山吹の病は快復することなく、死亡してしまいます。その病状は、同じく「福寿」で5年前に亡くなった女郎・桔梗(一柳みる)のものと似ていました。
桔梗や山吹の死には不可解な点が多いことから、実は他殺なのではないかという噂も、まことしやかに流れていました。同じような疑惑は、ふみも抱いていましたが、そんなふみに対し、遣り手のお民(初井言榮)は明らかに、厳しい視線を向けるのでした。
そんな中、椿という名で売れっ子の女郎になりつつあった美津の客が死亡。美津もまた、死体となって発見されました。怒りとともに、いよいよ深まっていく、ふみの疑惑。果たして、美津や女郎たちを殺害したのは誰なのでしょうか? そして、彼女たちを殺さなければいけなかった犯人の動機は? 遊郭「福寿」では、いったい何が起こっているのでしょうか……?
遊郭で発生した、連続殺人事件の謎。時代背景を巧みに絡めたストーリーが展開され、やがて事件の全貌が明かされるシーンまで、高い緊迫感が保たれています。
幼なじみの美津までが被害者となったことで、ただでさえ負けん気の強いふみは、決して怯むことなく事件の真相へと迫っていきます。そんなふみにプレッシャーをかけるのが遣り手のお民。劇中ではたびたび、ふみ=斉藤さんとお民=初井さんが激突するシーンがあるのですが、初井さんはさすがの貫禄。対する斉藤さんも、一歩も引かない熱演を見せています。この2人に加えて本作では抑えた演技が中心の岡田茉莉子さんも存在感を示しており、遊郭という“花園”に集った女優たちの“競演”が、本作の最大の見どころといえるでしょう。
ビッグネームが並ぶ中、前半で重要な役割を担う美津=椿役として濡れ場にも挑戦しているのが、撮影当時24歳だった小野沢智子さん。本作の後には、映画『昭和鉄風伝 日本海』(91年)で浜田雅功さんが演じた主人公の高校時代の同級生役を演じたほか、多くの作品で活躍されています。また、どうしても女優陣が目立つ本作ですが、ピンポイントで左とん平さん、深水三章さん、梅津栄さん、井上昭文さんといった名バイプレーヤーの方々が個性を発揮しているのも見逃せません。
特別企画として、放送当時は2時間半の枠で放送された本作。ゆえに本編尺も、たっぷり2時間弱となっています。“豪華絢爛”という形容が相応しい娯楽大作、この機会にぜひ、ご覧になってください。
それでは、また次回へ。10月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第4回でご紹介した『女からの眺め』(脚本:早坂暁/監督:吉川一義/出演:岡田茉莉子、樹木希林、三ツ矢歌子、加藤治子ほか)、1981年の『土曜ワイド劇場』より『死刑執行五分前』(原作:比佐芳武/出演:若山富三郎、中村玉緒、高岡健二、内田朝雄ほか)が放送されます。これらの作品群もぜひご堪能ください。
【10月の『刑事くん』(第2シリーズ)】
10月、新登場となるエピソードは第29話から第36話まで。その中から、今回は市川森一さんが脚本を担当した第32話「めぐり逢う日まで」と、第34話「青春への伝言」をご紹介します。
第32話「めぐり逢う日まで」(監督:富田義治)
ある化粧品店に泥棒が入りましたが、どうやら、盗まれたのは「ラブミー化粧品」のポスターだけでした。軽微な事件ということで、この件は三神刑事(桜木健一)がひとりで担当することに。しかし、軽微であったがゆえに、被害に遭った店さえ、まともに捜査に協力してくれませんでした。
そんな中、三神の執念で、ひとりの容疑者が浮かび上がりました。それは、ポスターに写ったモデル・春川マナ(菅沢恵美子)のファンで、高校1年生の加藤順平(今村良樹)でした。学校でも家庭でも、特に心配されることのない「健全な青年」の順平が、なぜこんな犯罪に及んだのか。順平の気持ちを想像していくうちに、三神刑事には、この事件の「動機」が見えてきたのです……。
この回の特徴は、ついぞ三神刑事が、この事件をどう処理したのか語られないことです。三神はどうやら、犯人の「動機」にしか興味がなかったようで、自分が推理した「動機」に間違いがなかったことが確認できると、そこで捜査をやめてしまいました。それどころか、「犯人」である高校生の少年と心を通わせ合うのです。「自分も同じだよ」と言わんばかりに……。
このあたり、市川森一さんが描く『刑事くん』の特徴といえるでしょう。現在のテレビ界では、「刑事ドラマ」という体裁をとっている以上は、このような脚本は映像化されにくい気がします。しかし、間違いなく言えるのは、『刑事くん』というシリーズの最大の魅力は今回のような、「刑事である前に、まず人間」という主人公・三神の姿を描いている点にある、ということです。
メインライターである長坂秀佳さんが描いたのが、“刑事”としての三神の成長だとするならば、市川さんは終始、“人間”としての三神に目を向け続けました。それも、描いたのは「成長」ではなく、変わらない「純粋さ」だったといえるでしょう。今回などは、言葉を選ばずにいえば、三神が独断で事件を「握りつぶした」とも捉えられるエピソードです。軽微な事件だったとはいえ、これでは本来、「刑事失格」でしょう。
ラスト、三神は別の事件の捜査に参加し、意外な形で、ポスター盗難事件にも終止符を打ちます。より正確にいえば、事件そのものではなく、彼自身の「気持ち」にピリオドを打ったのです。このくだりがあって、初めて「刑事ドラマ」として、しかもギリギリのラインで成立するというのが市川脚本の見事さでしょう。
なお、一部のマニアには知られているエピソードですが、ラスト近く、三神と順平がひとしきり話し合った後に無言になるシーンで、市川さんは「二人の青春の間を青い風が吹きぬける」という、おそらくシナリオ学校などでは「悪い例」として注意されそうな、絶妙なト書きを記しました。これを、市川さんと相性が良かった富田義治監督がどのように映像化したのか、ぜひ実際にご覧になって、確かめてみてください。
第34話「青春への伝言」(監督:加島 昭)
三神が知り合い、やがてお互いに思いを寄せ合うようになった高校生の少女・千景(小林千恵)。三神は自分が刑事であることを、そして千景は自分がスケバングループの中心メンバーで、暴力団の手先として犯罪に加担していることを隠していました。
しかし、やがて城南署が捜査中の事件の関係者として千景の名が浮かび、一方、暴力団の側も、千景と三神が会っていることを怪しみ始めます。もしかしたら、千景は自分たちの情報を、三神に提供しているのではないか?
千景は三神が刑事だと知り、激しいショックを受けました。しかも、組織からは裏切り者だと疑われることになり、千景のみならず、仲間たちまでが命の危険にさらされました。そんなとき、千景たちを必死の思いで救ったのは、他ならぬ三神でした。三神の心からの言葉を聞いて、泣き崩れるスケバングループ。そして千景は……。
「ピンスポ!」のインタビュー企画でも、主演の桜木健一さんが忘れられない回だと語っていた、『刑事くん』としては異色の恋愛編。このエピソードの放送は1973年12月でしたが、同年3月にリリースされ、夏を過ぎるころから本格的にヒットし始めたペドロ&カプリシャスの名曲「ジョニィへの伝言」がフィーチャーされており、サブタイトルも、同曲を意識したものになっていました。
先に紹介した第32話で、高校生と「理想の恋人」について話し合った三神。そんな彼がこの第34話で女子高生と交際している……というあたり、脚本の市川さんの中では32話と34話がつながっていたのかもしれません。もっとも、現職の刑事と女子高生(しかもスケバン)の熱愛、なんていうネタはやはり、現在のテレビ界では扱いづらいに違いありませんが……。
ラスト、文字通り「すれ違って」いく2人の青春を、加島昭監督が情感たっぷりに演出しています。ゲストヒロイン・千景を演じたのは小林千恵さん。本作の当時は中学3年生で、アイドル歌手としても活躍されていました。小学生時代には子役として『キャプテンウルトラ』(67年)や『ジャイアントロボ』(67年)などに出演。1971~72年にかけては「瞳ちえ」名義で活躍し、とりわけ『キイハンター』第210話「いんちきキイハンター探偵局」でのカオル役が印象的でした。こちらのエピソードも東映チャンネルで12月放送予定なのでどうぞお見逃しなく!
文/伊東叶多(Light Army)
<放送日時>
『花園の迷宮』
10月15日(木)13:00~15:00
10月24日(土)15:00~17:00
10月27日(火)22:00~24:00
『女からの眺め』
10月20日(火)21:30~23:20
『死刑執行五分前』
10月31日(土)22:00~24:00
『刑事くん』(第2シリーズ)
毎週月曜日18:00~19:00(2話ずつ放送)
再放送:毎週金曜日7:00~8:00
『刑事くん』(第1シリーズ)
毎週木曜日19:00~20:00(2話ずつ放送)
2020年9月23日
カテゴリー: その他
