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むちゅー刑事
本名:ヒライズミ
棲息地(勤務地):「警視庁銀座懲怒街警察署刑事課
特徴:映画、ドラマに精通し、旨いメシ旨い酒にうるさい。
好きな言葉:「ドブネズミみたいに美しくなりたい」アーカイブ
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日別アーカイブ: 2019年7月22日
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第6回『超高層ホテル殺人事件』
今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、『土曜ワイド劇場』の1982年作品『超高層ホテル殺人事件』をご紹介します。1982年の『土ワイ』は、1月2日の3時間スペシャル『天国と地獄の美女』からスタート。この作品は、天知茂さん主演の「明智小五郎」シリーズ(=江戸川乱歩の美女シリーズ)の中でも最大級のスケールで描かれた作品であるとともに、40年近く前のこととはいえ、よくこれが「お正月特番」としてオンエアされたものだと驚いてしまうような、ぶっ飛びまくった作品でした。ちょうど東映チャンネルでは『宇宙刑事ギャバン』も放送していますが、『ギャバン』がスタートする約2ヶ月前の叶和貴子さんの「熱演」も、『天国と地獄の美女』の伝説のひとつとなっています。
『超高層ホテル殺人事件』は、この『天国と地獄の美女』の翌週に放送された、新年第2弾作品。原作が森村誠一先生、主演が田村正和さんという強力ラインナップでした。
戦後の経済界の巨人・猪原(いはら)留吉の息子である杏平(田村正和)は、父の死後、イハラコンツェルンの2代目社長となりました。しかし、若き社長に対する風当たりは強く、都心の超高層ホテル「イハラネルソン」はアメリカのネルソン社の資金援助を受けて経営されるはずだったのですが、ネルソン社のトマス・ソレンセン(ライナー・ゲッスマン)は、その約束を反故にしようとします。激昂した杏平は激しい殴り合いの末、ソレンセンを完成したばかりのホテルの16階から突き落としてしまいました。間もなく、前夜祭レセプションが始まる時間だというのに――。
目撃者は、秘書課長の大沢(内田勝正)のみ。大沢は、「後はなんとかします」と言って杏平を送り出しました。やがて始まるレセプション。ところが、会場でホテルの全景が映し出されたとき、ホテルから人が転落したのです。レセプションに集まった客たちは驚愕しますが、最も驚いていたのは杏平でした。地上で発見された死体は、ソレンセンのみ。ソレンセンはホテルから「二度落ちた」のでしょうか……!?
なんとも、興味をそそる導入部です。この「二度落ちた」謎だけでも、新年第2弾作品の「格」としてはじゅうぶんな気がしますが、ここから、さらに事件は複雑化していくのです。考えてみれば、これだけなら「2代目社長の軽率な犯罪」で終わってしまうわけですが、ドラマは、戦後の日本の高度経済成長も背景に入れつつ、複雑な人間関係をこれでもかと抉るように描いていきます。ラスト数分までテンションが落ちない構成は、なかなか絶妙なものだったと言えるでしょう。原作の森村先生が元・ホテルマンだったというのは、推理小説ファンには有名な話。江戸川乱歩賞を受賞し、出世作となった「高層の死角」も本作と同様、ホテルを舞台にした作品でした。本作の原作は「高層の死角」の2年後である1971年に発表。ちょうど「京王プラザホテル」(地上47階)がオープンした年で、実にタイムリーな作品だったと言えます。映像化は、1976年の映画が最初。このときは、杏平役を近藤正臣さんが演じていました。
原作では、「ホテルの部屋から人が落ちた」事件がそもそもの発端となっているため、その「密室トリック」が主な焦点となるのですが、『土ワイ』版では、最初から犯行(事故に近いですが)の一部始終を視聴者に見せることで、この「密室トリック」の興味を捨てているのが、なんとも大胆です。杏平の父・留吉も、ドラマが始まる以前に亡くなっている設定なので、杏平という主人公の人物像が、主演である田村正和さんの演技に、より委ねられる形になっています。『古畑任三郎』シリーズで、犯人を「追いつめていく」側の田村さんのイメージが強いですが、逆の立場の田村さんを楽しめるのが、本作の大きなポイントの一つでしょう。また「追いつめていく」側の刑事役も、那須警部役の佐藤慶さんをはじめ、本作の放送後に『西部警察PART-Ⅱ』(82年)にレギュラー出演することになる井上昭文さんや、70年代に『刑事くん』シリーズ(71~76年)で「島さん」こと島崎刑事を演じていた守屋俊志さんといった、豪華なキャスティングとなっています。
この他のキャストは、杏平のかつての恋人で、杏平が結婚した後も不倫関係を続けている是成友紀子役に、結城しのぶさん。友紀子も結婚しているので、いわゆる「W不倫」ということになりますが、杏平も友紀子も「政略結婚」で引き裂かれているため、この2人の「深い愛」が、最後まで事件のカギとなっていきます。
杏平をサポートする木本専務役は、横内正さん。当時、横内さんは『土ワイ』の前の時間帯で放送されていた『吉宗評判記・暴れん坊将軍』(78~82年)で大岡忠相(越前)を演じていましたが、本作では、この大岡とはまた違った顔を見せています。
杏平のライバルにあたる浅岡役の西沢利明さん、レセプションに出席している大臣役の伊豆肇さんなどもハマり役。それぞれ、出番が少なめなのが惜しまれるところです。
なお、本作でも、先月ご紹介した『0計画(ゼロプラン)を阻止せよ』と同じく、特撮スタッフがクレジットされています。ホテルからの転落シーンの合成が該当場面ですが、さすがに現在の視点で観ると少々厳しい出来ながらも、当該シーンのビジュアルが視聴者に与えたインパクトは、決して小さくなかったと思われます。
そして、細かい点では、ラスト近くでなぜか、70年代の東映アクションドラマ『ザ・ボディガード』のテーマ曲アレンジBGMが流用されていたりしますので、このコラムを読んでくださっているような方々には、たまらないのではないかと……。
それでは、また次回へ。なお、8月の「違いのわかるサスペンス劇場」では、本作のほか、やはり森村誠一先生の原作による1984年の『火曜サスペンス劇場』作品「行きずりの殺意」(出演:浜木綿子、船越英一郎、松尾嘉代ほか)も放送されます。こちらもぜひ!
文/伊東叶多
<放送日時>
『超高層ホテル殺人事件』
8月10日(土)13:00~15:00
8月24日(土)13:00~15:00
『行きずりの殺意』
8月3日(土)13:00~14:50
8月17日(土)13:00~14:50
8月31日(土)13:00~14:50
2019年7月22日
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