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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第25回『大東京四谷怪談』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1978年9月に放送された「土曜ワイド劇場」作品『大東京四谷怪談』をご紹介します。『土曜ワイド劇場』は、1978年7月から放送2年目に入りましたが、当時はまだ2時間枠ではなく、90分枠での放送でした。8月第3週、第4週には「夏の怪奇シリーズ」と題し、それぞれ『原色の蝶は見ていた 死の匂い』『怪奇!巨大蜘蛛の館』を放送。前者は西村寿行先生の原作で、脚本:山浦弘靖さん、監督:増村保造さんという『ザ・ガードマン』(65年)的な布陣。主演は由美かおるさんが務めました。後者は円谷プロのオリジナル作品で、キャストには小川知子さん、中山仁さんらが名を連ねています。

『大東京四谷怪談』は9月第1週の放送ということで、「夏の怪奇シリーズ」の冠こそ外れたものの、「怪奇シリーズ特選!」と題して放送されました。ちなみに、この時期、裏番組としては、夜9時台は民放各局ともにドラマを放送。日本テレビは水谷豊さん、大竹しのぶさんが主演の『オレの愛妻物語』、フジテレビは田宮二郎さん主演の『白い巨塔』、東京12チャンネル(現:テレビ東京)は里見浩太朗さん主演の『大江戸捜査網』、そしてTBSでは、丹波哲郎さん主演の『Gメン’75』が放送されていました。もし、この日にタイムスリップしたら「全部観たい!」という気持ちになりそうです。1978年なので、ビデオデッキすら、ほとんど普及していない時代ですが……。

さて、この『大東京四谷怪談』ですが、原作は「神津恭介」シリーズなどで知られる高木彬光先生。本作は「墨野隴人(すみの・ろうじん)」シリーズの第3作として1976年に発表された長編作品の映像化ですが、墨野隴人や村田和子といったキャラクターはそのまま登場するものの、原作からは、かなり大胆に改変されています。監督は、『プレイガール』(69~74年)などを経て、当時は『必殺』シリーズなどを手がけていた原田雄一さんが務めました(プロデューサーも『プレイガール』の大久保忠幸さんです)。

 

二宮柳子(富山真沙子)が何者かに暴行されたうえ、惨殺されるという事件が発生してから、1年が経とうとしていました。柳子は38歳でしたが、あまりの恐怖に直面したためか遺体は総白髪になっていました。

高田馬場で探偵事務所を営む村田和子(鰐淵晴子)は、亡くなった夫の親友でもあった清水(西沢利明)から、彼の親戚でもある柳子の殺人事件を調査してほしいという依頼を受けました。殺人事件を担当した経験のない和子は当初、頼れる存在である謎多き名探偵・墨野隴人(三橋達也)の協力を得ようと考えていましたが、あいにく墨野は仕事で海外へ出かけてしまっていました。そこで和子は清水とともに二宮家へ。ところが、まるで和子の到着を待っていたかのように、二宮家に関わる人々が謎の怪死を遂げていきます。最初は、巨漢の運転手(大前均)。そして、二宮家に出入りしていた蝋人形師の伊藤(太刀川寛)、さらには美術商の稲村(天草四郎)まで……。

やがて、清水を通じて和子に調査を依頼してきたのは、柳子の妹(二宮さよ子)であることがわかりました。そして浮かび上がってくる、あの「四谷怪談」との奇妙な類似点。稲村や伊藤が殺されたのは、本当に「お岩さん」の祟りなのでしょうか。そんなとき、二宮家へやってきた新たなお手伝い・竹中糸子(加山麗子)。彼女は、清水がかつて愛した女性・佐久間静子とそっくりでした――。

 

あらすじを細かく読んでくださっている方はそんなにいらっしゃらないだろうと思いつつ、今回は敢えて、時系列などを多少、崩した形で書いてみました。2時間枠の時代よりも尺が短い作品のため、短時間にいろいろなことが起こります。それだけテンポの良い作品なのですが、提示される情報量も多く、観る側はグイグイと引き込まれていくことでしょう。

“怪談”というだけあって、不気味な描写も全編にわたって登場します。実際の冒頭は、柳子が殺害される様子から幕を開けるのですが、さすが“昭和”のドラマだけあって、なかなかエグいです……。

墨野隴人には三橋達也さん、村田和子には鰐淵晴子さんというキャスティング。三橋さんは本作の翌年から『土曜ワイド劇場』では“十津川警部”となるので、ある意味、本作での墨野役はかなりレアだといえるでしょう。また鰐淵さんの和子は(陰惨な事件に直面しているにもかかわらず)ちょっとコミカルな一面を見せており、墨野とも息が合っていたので、このコンビでシリーズ化が実現していたら、けっこう面白くなっていたかもしれません。

本作のクライマックスは、幻想的な演出が印象に残ります。四谷ならぬ新宿を舞台に、錯乱していく真犯人(ネタバレになるため伏せますが、すでにあらすじの中に登場しているので、予想してください)の姿にご注目ください。また、「お岩さん」の声として出演しているのは、当時『魔女っ子チックル』(78年)のチックル、『未来少年コナン』(78年)のモンスリーなどを演じていた、売れっ子声優の吉田理保子さん。劇中、どのタイミングで、どんな形で「お岩さん」が声を発するのかは、観てのお楽しみということで……。

 

それでは、また次回へ。3月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第9回でご紹介した『消えた男』(監督:堀川弘通/出演:緒形拳、秋吉久美子、中条静夫ほか)、1980年の『傑作推理劇場』より『尊属殺人事件』(出演:辰巳柳太郎、浅茅陽子、浜村純、菅井きん、風見章子ほか)が放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

<放送日時>

『大東京四谷怪談』

3月8日(月)13:30~15:00

3月18日(木)21:30~23:00

3月26日(金)18:30~20:00

 

『消えた男』

3月5日(金)14:00~15:00

3月20日(土)12:30~13:30

 

『尊属殺人事件』

3月6日(土)12:30~13:30

2021年2月22日 | カテゴリー: その他