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むちゅー刑事
本名:ヒライズミ
棲息地(勤務地):「警視庁銀座懲怒街警察署刑事課
特徴:映画、ドラマに精通し、旨いメシ旨い酒にうるさい。
好きな言葉:「ドブネズミみたいに美しくなりたい」アーカイブ
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日別アーカイブ: 2021年6月6日
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第28回『三階の魔女』
今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1989年の『現代神秘サスペンス』作品『三階の魔女』をご紹介します。原作は、当コラムの第20回でご紹介した『花園の迷宮』で江戸川乱歩賞を受賞して小説家デビューした山崎洋子先生。『三階の魔女』は1989年に発表された短編集『三階の魔女』の表題作で、すなわち、発表から間もなく映像化されたということになります。『現代神秘サスペンス』は、この当時、関西テレビが毎年夏(7月クール)に放送していた『現代怪奇サスペンス』(86年)、『現代恐怖サスペンス』(87年)などの流れを汲むシリーズで、『三階の魔女』は第1話を飾っています。ちなみに、一連のシリーズの放送枠は月曜夜10時~の1時間枠。『現代神秘~』と同時期の「月9」ドラマは『同・級・生』(原作:柴門ふみ/脚本:坂元裕二/出演:安田成美、緒形直人ほか)で、裏番組のTBSドラマ『ママハハ・ブギ』(出演:浅野温子、織田裕二ほか)と熾烈な視聴率競争を展開していました。
さて『三階の魔女』ですが、1987年の東映京都作品『夜汽車』と同じく、監督:山下耕作&主演:十朱幸代という形で製作されました。さらに遡れば、山下監督は1963年の『関の弥太ッペ』でも、当時20歳の十朱さんをヒロイン役に起用しています。
主人公・川村真琴(十朱幸代)は、働き盛りのフリーカメラマン。若い助手(柳沢慎吾)にテキパキと指示を出しながら、エネルギッシュに仕事をこなす日々でした。
しかし、そんな真琴の人生を一変させる出来事が起こってしまいます。彼女が暮らすマンションの隣の部屋に若い男性が押し入り、主婦の美根子(島村佳江)と赤ん坊を人質にして立てこもったのです。そして、その犯人は、「自分は真琴の恋人だ」と主張していました。真琴自身には全く身に覚えがありませんでしたが、そういえば、このところマンションの様子を窺っている若い男性がいることは確認していました。とはいえ、その男性が犯人なら、真琴は勝手に好意を持たれ、このような大胆な事件を起こされてしまったことになります。真琴の部屋へ強引に上がり込んできた安藤刑事(小林稔侍)は、事件を早い段階で解決しようと、真琴に協力を要請。予想もしていなかった状況に、戸惑う真琴でしたが、犯人はさらに、異様な要求を真琴に突きつけました。なんと、自分と一緒に心中してほしいというのです。
真琴からしてみれば、迷惑この上ない話でした。しかし、このままでは、人質になっている美根子たちが危険です。情報を知ったマスコミも一斉に、この事件に飛びつきました。真琴は完全に“悪役”扱いとなり、プライバシーも猛烈な勢いで暴かれていきます。そして、事態を知って帰宅した美根子の夫・大里照夫(北村総一朗)も、真琴を激しく責めました。やがて真琴は、ある決意を固めます……。
1時間ドラマなので、あらすじ紹介はこのへんで。中盤以降、驚愕の「どんでん返し」が待っています。あらすじ紹介では敢えて省略した、冒頭の「ちょっとしたやりとり」を観ていれば、もしかしたら早めに、本作の「オチ」に気がつくかもしれませんが……。
それにしても、本作のコワさは、マスコミが遠慮なく、真琴の個人情報などを晒していくくだりです。もちろん、ドラマゆえの誇張はありますし、現在では、さすがにここまで個人情報が無神経に扱われる可能性は低いでしょう。とはいえ、先日の東京都立川市で発生した事件では、犯人の名前が(未成年ゆえ)伏せられた一方で、被害者の名前だけが何の遠慮もなく発表されたりと、人権に対する考え方という点で、ひじょうにバランスを欠いた報道が(相変わらず!)なされています。『三階の魔女』はミステリとしての面白さだけでなく、ある種の社会風刺という視点も備えている点で、令和の現在における視聴にも、じゅうぶん耐えうるドラマなのではないでしょうか。ともすれば、「暗さ」が作品全体を支配しそうな筋立てではありますが、序盤における真琴と助手の描写がポップで、救いになっていました。出番は少なめながらも、柳沢慎吾さんというキャスティングは成功だったと言えましょう。また、原作での真琴の職業はホステスで、物語の展開上はそのほうが確かに「しっくりくる」のですが、映像化にあたって「カメラマン」と設定したことが、クライマックスで大きな意味を持ちます。この改変は「なるほど」と唸る工夫なので、ぜひ注目してください。
それでは、また次回へ。6月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第11回で採り上げた『暗い穴の底で』(脚本:長坂秀佳/監督:天野利彦/出演:近藤正臣、山口果林ほか)、1981年の『傑作推理劇場』より『異人館の遺言書』(出演:フランキー堺、春川ますみ、岡田真澄ほか)、1992年の『不思議サスペンス』より『姿のない尋ね人』(監督:崔洋一/出演:古尾谷雅人、黒田福美、内藤剛志ほか)、1986年の『山村美紗サスペンス』より『死人が夜ピアノを弾く』(脚本・監督:中島貞夫/出演:松方弘樹、松尾嘉代、西田健ほか)が放送されます。これらの作品群も、ぜひご堪能ください。
文/伊東叶多(Light Army)
<放送日時>
『三階の魔女』
6月7日(月)14:00~15:00
6月14日(月)11:00~12:00
6月25日(金)19:00~19:50
『暗い穴の底で』
6月22日(火)10:00~11:00
『異人館の遺言書』
6月11日(金)14:00~15:00
『姿のない尋ね人』
6月15日(火)16:00~17:00
『死人が夜ピアノを弾く』
6月11日(金)12:30~14:00
2021年6月6日
カテゴリー: その他