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むちゅー刑事
本名:ヒライズミ
棲息地(勤務地):「警視庁銀座懲怒街警察署刑事課
特徴:映画、ドラマに精通し、旨いメシ旨い酒にうるさい。
好きな言葉:「ドブネズミみたいに美しくなりたい」アーカイブ
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日別アーカイブ: 2021年10月4日
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チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第32回『断罪』
今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1985年の『火曜サスペンス劇場』作品『断罪』をご紹介します。原作は江戸川乱歩賞作家で、弁護士としての顔も持つ和久峻三先生。本作では、裁判長役で出演もされています。その代表作は「赤かぶ検事シリーズ」や「京都殺人案内シリーズ」など。本作の原作となった同名作品「断罪」は、放送の前年である1984年に発表された作品でした。放送は1985年4月16日。時代的には、電電公社(この響きも懐かしい……)がNTTへ、日本専売公社がJTへ、それぞれ「民営化」したころです。またフジテレビでは平日・夕方の時間帯で『夕やけニャンニャン』がスタート。間もなく「おニャン子クラブ」ブームが巻き起こっていきます。4月17日には、阪神タイガースのバース・掛布・岡田による「バックスクリーン3連発」があり、約半年後(10月16日)には、21年ぶりのセントラルリーグ優勝を手にしました。アラフィフの筆者は昨日のことのように当時を思い出せますが、もう36年も昔(つまり1985年も丑年)のことなのですね……。
BAR「山科」で働く工藤紀美子(松尾嘉代)には、2人の息子がいました。長男は、同じく「山科」でバーテンダーを務めている康男(杉本哲太)。次男は病院長・大沢誠造(神山繁)との間に生まれたばかりの誠介です。紀美子は誠造の愛人で、誠介の認知を誠造に求めていましたが、まだ実現していませんでした。康男は、自分という息子がありながらも、異父弟にあたる誠介を溺愛している紀美子に対して、複雑な思いを抱えていました。
そんなある日、誠介がポットに入っていた熱湯を浴びて、火傷を負いました。この事故には不自然な点が見受けられたため、早速、奥山刑事(草薙幸二郎)と矢崎刑事(中田博久)が捜査を開始。当初、紀美子は、誠造の正妻である道代(長内美那子)が怪しいと警察に進言しましたが、道代には「ホストクラブに行っていた」というアリバイが存在することが判明します。さらに捜査が進み、逮捕されたのは、なんと康男でした。異父弟である誠介に、母親の愛情を奪われたことが、犯行の「動機」とされたのです。当然、康男には身に覚えがありませんでしたが、なんと紀美子は、大沢誠造に誠介の認知をしてもらいたいので、ここは一旦、罪を認めてほしいと康男に懇願。心ならずも、康男は刑事たちにウソの自供をするのでした。誠介が認知さえされれば、紀美子が自分を助けてくれるだろうと、一縷の望みをかけていたのです。
しかし今度は、なんと道代が康男のために弁護士を雇いました。道代としては、どうしても夫の誠造に、誠介の認知をさせたくなかったのです。その目的のために雇われた萩野弁護士(大場順)は、「康男犯人説」を覆すべく、調査を進めていきます。これに対し、実の母である紀美子は一貫して、「康男犯人説」を主張。裁判で展開されたのは、母親が息子の犯行を否定するどころか強く主張するという、異様な状況でした。果たして、誠介に火傷を負わせた真犯人は誰なのでしょうか。そして、紀美子の求める「誠介の認知」という夢は、叶うのでしょうか……。
常に「鬼気迫る」という表現が相応しい松尾嘉代さんが、本作でも感情の起伏が激しい主人公を好演しています。不幸な身の上だったとはいえ、紀美子は自分のことしか考えない、利己的な女。この紀美子の身勝手さを描いていくうえで、息子である康男も重要な役どころでしたが、近年では映画やテレビドラマのバイプレーヤーとして高い評価を受けている杉本哲太さんが、抑えた演技で見事に、康男の人物像を表現していました。当時の杉本さんは19歳。映画『白蛇抄』(83年)への出演で、俳優としても注目を集め始めた時期でした。
また、松尾さんと演技合戦を繰り広げるのが、道代を演じた長内美那子さんと、あらすじには登場していませんが、康男の恋人・しのぶを演じた中村久美さん。松尾さんVS長内さんや、松尾さんVS中村さんのシーンを観ているだけでも、のめり込んでいける作品になっています。もちろん、和久先生の原作だけあって、裁判シーンも見応えたっぷりです。なお各種資料には、キャストとして西田健さんの名前も含まれていますが、実際の完成作品では西田さんの出演を確認できませんでした(クレジットもありません)。撮影には参加したが出演シーンがカットされたのか、それともスケジュールの都合などで、演じるはずだった役柄に代役が立てられたのか……そのあたりの詳細は不明です。
それでは、また次回へ。10月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第3回で採り上げた『女教師』(脚本:新藤兼人/出演:和泉雅子、黒沢年男ほか)、同じく第15回で採り上げた『華やかな死体』(監督:池広一夫/出演:竹脇無我、佐藤慶ほか)、1984年の『火曜サスペンス劇場』より『妄執の女』(原作:和久峻三/出演:市原悦子、財津一郎、誠直也ほか)、1979年の『土曜ワイド劇場』より『松本清張の聞かなかった場所』(出演:藤田まこと、大谷直子、森下愛子ほか)、1982年の『土曜ワイド劇場』より『松本清張の駅路』(脚本:山田正弘/監督:富本壮吉/出演:古手川祐子、広岡瞬、田村高広、吉行和子、大坂志郎、潮哲也ほか)が放送されます。これらの作品群も、ぜひご堪能ください。
文/伊東叶多(Light Army)
<放送日時>
『断罪』
10月5日(火)13:00~15:00
10月13日(水)20:00~22:00
10月18日(月)11:00~13:00
10月26日(火)11:00~13:00
『女教師』
10月12日(火)11:00~12:30
10月16日(土)15:30~17:00
10月21日(木)24:00~25:30
『華やかな死体』
10月26日(火)13:00~15:00
『妄執の女』
10月5日(火)11:00~13:00
10月13日(水)22:00~23:50
10月20日(水)11:00~13:00
『松本清張の聞かなかった場所』
10月18日(月)21:30~22:50
『松本清張の駅路』
10月19日(火)11:00~13:00
2021年10月4日
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