その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY                第26回『花柳幻舟獄中記』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1984年5月に放送された『月曜ワイド劇場』作品『花柳幻舟獄中記』をご紹介します。

『月曜ワイド劇場』は、1982年の秋から4年間にわたって、テレビ朝日・月曜夜9時~11時(最後の1年間のみ、夜8時~10時に移動)に編成されていた2時間ドラマ枠です。もともと、この枠では1981年の秋から1年間、『ゴールデンワイド劇場』という形で、主に邦画が放送されていましたが、1982年の春以降は新作の2時間ドラマが放送されることも多くなっていき、そのまま『月曜ワイド劇場』へと移行したのです。『ゴールデンワイド劇場』時代の2時間ドラマ作品の中には、山田太一さんが自らの原作を脚本化した名作『終りに見た街』などがありました。

さて『月曜ワイド劇場』ですが、この枠で放送される2時間ドラマは当初より「女のドラマ」などと銘打たれることが多く、打ち出し方として、同じテレビ朝日の2時間ドラマ枠として先行・定着していた『土曜ワイド劇場』との差別化を図った形跡が見られます。さらに細かく傾向を追っていくと、1983年の放送作品には『女囚犯歴簿』『悲しみの交通刑務所』『女子少年院』『女の哀しみの声がきこえる 女囚258号鉄格子の中で出産!』といったタイトルも。『花柳幻舟獄中記』のドラマ化は、こういった作品群が安定した支持を得たことから、実現したものだと考えられるでしょう。

このドラマの原作となったのは、舞踊家・花柳幻舟さんの自伝『夕焼けは哀しみ色』。ドラマ内でも生々しく“再現”されていますが、日本舞踊「花柳流」の名取となった幻舟さんは1960年代の後半から「家元制度」打倒を目指した活動を続け、1980年2月、当時の家元だった花柳壽輔(三代目)を斬りつける事件を起こし、傷害罪で服役することになりました。ドラマでは、同年10月末から翌年4月末までの、約半年間にわたる刑務所生活が、幻舟さんの視点から描かれていきます。ドラマ化にあたっては、東映の劇場作品でも共作歴のある掛札昌裕さんと中島信昭さんが組み、中島さんが構成、掛札さんが脚本としてクレジット。監督は、『不良番長』シリーズで知られる野田幸男さんが務めました。

 

舞踊家・花柳幻舟こと川井洋子(花柳幻舟)は、傷害罪で懲役8ヶ月という判決を受け、告訴することなく、形に服すことになりました。栃原刑務所(実際は「栃木刑務所」)で、幻舟の新たな生活が始まります。刑務所で出会ったのは、強烈な個性を持った女囚たち。幻舟=洋子は「有名人」ゆえ、当初は特に、彼女たちから目の敵にされ、精神的・肉体的に辛い日々を過ごすのでした……。

 

あらすじとしては、ひじょうにシンプルな本作。物語の大半は刑務所内が舞台で、幻舟さんと女囚たちの確執、交流が描かれました。女囚や、刑務所の関係者を演じる女優のみなさんは芸達者揃いで、演技合戦を観ているだけで、全く退屈しません。ネタバレになるかもしれませんが、後半の見どころは、女囚たちが幻舟さんの書いた台本で演じる芝居です。設定ではもちろん、女囚たちは演技の素人ですが、その女囚を演じているのが演技派の女優さんたち(ややこしい……)なので、この「劇中劇」は当然ながら、見応えのあるものになっているのです。

印象的な登場人物を挙げるとキリがありませんが、中でもやはり、中山綾子(殺人罪で無期懲役)役の中原早苗さん、佐々木京子(横領罪)役の宮下順子さん、赤城ヤエ役の白川和子さんといったあたりは出色。この他、出番は少なめですが、花村菊(詐欺罪)役の三條美紀さんもさすがの存在感を示しています。また、作品の性格上、男優陣は少ないのですが、幻舟さんの父親として「現在」と「過去(回想シーン)」に登場した和崎俊哉さんをはじめとして、京子の夫役・島田順司さん、ヤエの情夫役・中田博久さん(当時は『超電子バイオマン』にも悪役でレギュラー出演中でした)といった方々が、まさに「適役」を演じておられますので、どうぞご注目ください。

 

それでは、また次回へ。4月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第10回でご紹介した『百円硬貨』(監督:野田幸男/出演:いしだあゆみ、川地民夫ほか)、1981年の『傑作推理劇場』より『雪の螢』(監督:浦山桐郎/出演:大空眞弓、二宮さよ子、鹿沼えりほか)、1993年の『サスペンス・明日の13章』より『小さな王国』(監督:吉川一義/出演:岩下志麻、草刈正雄、石立鉄男ほか)、1988年の『乱歩賞作家サスペンス』より『罠の中の七面鳥』(監督:崔洋一/出演:浅野ゆう子、古尾谷雅人、相楽晴子、角野卓造ほか)が放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

<放送日時>

『花柳幻舟獄中記』

4月2日(金)13:00~15:00

4月9日(金)20:00~21:50

4月30日(金)13:00~15:00

 

『百円硬貨』

4月9日(金)14:00~15:00

4月25日(日)13:00~14:00

 

『小さな王国』

4月1日(木)22:00~23:00

4月9日(金)13:00~14:00

 

『雪の螢』

4月1日(木)23:00~23:50

4月23日(金)13:00~14:00

 

『罠の中の七面鳥』

4月2日(金)16:00~17:00

4月23日(金)14:00~15:00

2021年3月22日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! 春の宵にミステリーを味わおう。 作家デビュー70周年 松本清張ドラマスペシャル

実はかめぽん、推理小説大好き少女だった。ちょうど学生時代に横溝正史シリーズが復刻し、世は推理小説ブーム。原作もたくさん読んだし、派生してクリスティやクリーンなんぞも読みかじったなあ。
金田一シリーズや、クリスティのスター総出演の映画なんかも観た。ちょうど、松竹さんが松本清張先生の映画を作っていた頃だったのでそれも観た。
だけど、なぜか清張作品だけ原作を読まなかった。家にあった文庫本が古くて、やたら字が小さかったからかもしれない。
その後、かめぽんの推理小説熱は冷め、清張作品を読む機会がないまま時は流れたのだけど。
で、2009年、かめぽんに松本清張先生の小説を時系列にチャート化するお仕事が舞い込んだ。
ライターさんの原稿通りに作るのだが、これが結構複雑で、そこで初めて清張先生の小説を読み始めたのだ。
時系列のチャートを作りながら読むので、内容もバッチリ頭に入るし、面白く読めた上にチャート図もなかなかの出来栄えになった。
お仕事は当初の計画よりも短い巻数で終わってしまったのだが、かめぽんにとって松本清張作品とのよい想い出になっている。
今回の作品は渋目のラインナップのせいか、かめぽんのお仕事で作らなかった作品が数多くある。良い機会なので、作品を視聴し、また原作本を読んでみようかな。
コロナ禍でお家時間はたっぷりある。

202103

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今月の東映チャンネルもバラエティにとんでおります。
北斗の拳実写版って…外国の方が演じたんだ!知らない作品はまだまだあるなあ。これはチェック。
「生誕90年 高倉健特集 Vol.2」は網走番外地に任侠ものと11作品も。
藤純子さんが好きなので「連続放送! 緋牡丹博徒」も楽しみだし、「ザ・スーパーガール」「プレイガール」「ミラクルガール」を見比べるのも楽しそう。
子供の頃、プレイガールにも憧れたなあ。
近所の公園でお散歩がてらのお花見くらいできますように。
皆さんも、くれぐれもご自愛くださいね。

今月もわくわくな東映チャンネルをお楽しみに。

2021年3月2日 | カテゴリー: かめぽん
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第25回『大東京四谷怪談』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1978年9月に放送された「土曜ワイド劇場」作品『大東京四谷怪談』をご紹介します。『土曜ワイド劇場』は、1978年7月から放送2年目に入りましたが、当時はまだ2時間枠ではなく、90分枠での放送でした。8月第3週、第4週には「夏の怪奇シリーズ」と題し、それぞれ『原色の蝶は見ていた 死の匂い』『怪奇!巨大蜘蛛の館』を放送。前者は西村寿行先生の原作で、脚本:山浦弘靖さん、監督:増村保造さんという『ザ・ガードマン』(65年)的な布陣。主演は由美かおるさんが務めました。後者は円谷プロのオリジナル作品で、キャストには小川知子さん、中山仁さんらが名を連ねています。

『大東京四谷怪談』は9月第1週の放送ということで、「夏の怪奇シリーズ」の冠こそ外れたものの、「怪奇シリーズ特選!」と題して放送されました。ちなみに、この時期、裏番組としては、夜9時台は民放各局ともにドラマを放送。日本テレビは水谷豊さん、大竹しのぶさんが主演の『オレの愛妻物語』、フジテレビは田宮二郎さん主演の『白い巨塔』、東京12チャンネル(現:テレビ東京)は里見浩太朗さん主演の『大江戸捜査網』、そしてTBSでは、丹波哲郎さん主演の『Gメン’75』が放送されていました。もし、この日にタイムスリップしたら「全部観たい!」という気持ちになりそうです。1978年なので、ビデオデッキすら、ほとんど普及していない時代ですが……。

さて、この『大東京四谷怪談』ですが、原作は「神津恭介」シリーズなどで知られる高木彬光先生。本作は「墨野隴人(すみの・ろうじん)」シリーズの第3作として1976年に発表された長編作品の映像化ですが、墨野隴人や村田和子といったキャラクターはそのまま登場するものの、原作からは、かなり大胆に改変されています。監督は、『プレイガール』(69~74年)などを経て、当時は『必殺』シリーズなどを手がけていた原田雄一さんが務めました(プロデューサーも『プレイガール』の大久保忠幸さんです)。

 

二宮柳子(富山真沙子)が何者かに暴行されたうえ、惨殺されるという事件が発生してから、1年が経とうとしていました。柳子は38歳でしたが、あまりの恐怖に直面したためか遺体は総白髪になっていました。

高田馬場で探偵事務所を営む村田和子(鰐淵晴子)は、亡くなった夫の親友でもあった清水(西沢利明)から、彼の親戚でもある柳子の殺人事件を調査してほしいという依頼を受けました。殺人事件を担当した経験のない和子は当初、頼れる存在である謎多き名探偵・墨野隴人(三橋達也)の協力を得ようと考えていましたが、あいにく墨野は仕事で海外へ出かけてしまっていました。そこで和子は清水とともに二宮家へ。ところが、まるで和子の到着を待っていたかのように、二宮家に関わる人々が謎の怪死を遂げていきます。最初は、巨漢の運転手(大前均)。そして、二宮家に出入りしていた蝋人形師の伊藤(太刀川寛)、さらには美術商の稲村(天草四郎)まで……。

やがて、清水を通じて和子に調査を依頼してきたのは、柳子の妹(二宮さよ子)であることがわかりました。そして浮かび上がってくる、あの「四谷怪談」との奇妙な類似点。稲村や伊藤が殺されたのは、本当に「お岩さん」の祟りなのでしょうか。そんなとき、二宮家へやってきた新たなお手伝い・竹中糸子(加山麗子)。彼女は、清水がかつて愛した女性・佐久間静子とそっくりでした――。

 

あらすじを細かく読んでくださっている方はそんなにいらっしゃらないだろうと思いつつ、今回は敢えて、時系列などを多少、崩した形で書いてみました。2時間枠の時代よりも尺が短い作品のため、短時間にいろいろなことが起こります。それだけテンポの良い作品なのですが、提示される情報量も多く、観る側はグイグイと引き込まれていくことでしょう。

“怪談”というだけあって、不気味な描写も全編にわたって登場します。実際の冒頭は、柳子が殺害される様子から幕を開けるのですが、さすが“昭和”のドラマだけあって、なかなかエグいです……。

墨野隴人には三橋達也さん、村田和子には鰐淵晴子さんというキャスティング。三橋さんは本作の翌年から『土曜ワイド劇場』では“十津川警部”となるので、ある意味、本作での墨野役はかなりレアだといえるでしょう。また鰐淵さんの和子は(陰惨な事件に直面しているにもかかわらず)ちょっとコミカルな一面を見せており、墨野とも息が合っていたので、このコンビでシリーズ化が実現していたら、けっこう面白くなっていたかもしれません。

本作のクライマックスは、幻想的な演出が印象に残ります。四谷ならぬ新宿を舞台に、錯乱していく真犯人(ネタバレになるため伏せますが、すでにあらすじの中に登場しているので、予想してください)の姿にご注目ください。また、「お岩さん」の声として出演しているのは、当時『魔女っ子チックル』(78年)のチックル、『未来少年コナン』(78年)のモンスリーなどを演じていた、売れっ子声優の吉田理保子さん。劇中、どのタイミングで、どんな形で「お岩さん」が声を発するのかは、観てのお楽しみということで……。

 

それでは、また次回へ。3月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第9回でご紹介した『消えた男』(監督:堀川弘通/出演:緒形拳、秋吉久美子、中条静夫ほか)、1980年の『傑作推理劇場』より『尊属殺人事件』(出演:辰巳柳太郎、浅茅陽子、浜村純、菅井きん、風見章子ほか)が放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

<放送日時>

『大東京四谷怪談』

3月8日(月)13:30~15:00

3月18日(木)21:30~23:00

3月26日(金)18:30~20:00

 

『消えた男』

3月5日(金)14:00~15:00

3月20日(土)12:30~13:30

 

『尊属殺人事件』

3月6日(土)12:30~13:30

2021年2月22日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! 雪景色が似合う。 健さんといえば、北の大地。

健さんといえば雪の中に佇む姿を思い出す。なんでだろう?
新幹線大爆破の犯人も、昭和残俠伝の渡世人も大好きな健さんなんだけど、なぜかかめぽんの中の健さんは雪の風景と一体化している。
網走番外地はあまり馴染みがないのだけど、八甲田山や動乱、あるいは他社の映画の印象なのかしら。
雪の中の健さん、絵になるなあ。
さてその健さんも亡くなって久しいが、今月から「生誕90年 高倉健特集」がスタート。
1回目は「網走番外地」特集。
たっぷりと11作品を放映。
雪の中の健さんが堪能できそう。
かめぽんもせっかくなので堪能しようと思う。

202102

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うちの姪っ子が大好きな「劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』公開記念【映画 セーラームーンスペシャル Vol.2」←かめぽんはアメリカの玩具屋でセーラームーンの人気のすごさを実感した思い出がある、かめぽん世代ならリアルタイムな「キューティーハニー」も特集。
時代劇ではかめぽん大好きなハードボイルドな「忍者狩り」「十一人の侍」が。
先日NHKでリメイクされた「十三人の刺客」に通じる、理不尽な事に一分を貫く男たちが描かれる。
個人的には昭和歌謡が好きなかめぽんの一押しは「夜の歌謡シリーズ 伊勢佐木町ブルース」「夜の歌謡シリーズ 長崎ブルース」。
子供の頃、意味もわからずチャララチャラララッラ、あ〜ん、あ〜んと青江三奈さんの真似をしていたっけ。

今年もわくわくな東映チャンネルをよろしくお願いします。

2021年2月1日 | カテゴリー: かめぽん
その他

チューもく!! 東映テレビドラマLEGACY 第24回『極刑』

今月の「東映テレビドラマLEGACY」は、1982年11月に放送された「火曜サスペンス劇場」作品『極刑』をご紹介します。この作品は、推理作家・ノンフィクション作家の福田洋先生が1981年に発表した『極刑 女流デザイナー誘拐殺人事件』を原作として、映画『華麗なる一族』(74年)、『不毛地帯』(76年)など骨太な作品を手がけてきた山田信夫さんが脚本化し、近年も水谷豊さん主演の『無用庵隠居奉行』シリーズなどを担当している吉川一義さんが監督を務めた作品です。

『極刑 女流デザイナー誘拐殺人事件』の題材となったのは、1965年に新潟県で発生した「新潟デザイナー誘拐殺人事件」でした。ドラマ版『極刑』も、かなり事実に基づいた描写がなされていますが、事件の舞台は新潟県新潟市から、群馬県高崎市へと変更されていました。

 

ある晩、群馬県高崎市に住む若い女性・高森由利子(美池真理子)が何者かによって誘拐されました。犯人が高森家に対して要求してきた身代金は、なんと2000万円。由利子の母である信子(左幸子)は、息子夫婦(住吉正博/早川絵美)とも相談し、警察に連絡を入れました。早速、大勢の捜査員が配備される中、信子たちは身代金を犯人に渡すべく、高崎駅へと向かいます。ところが犯人は、信子に対し、電車に乗って、指定の地点で窓から金を投げ落とすよう、指示を変更。信子はこれに従いますが、緊張と焦りで、うまく電車の窓を開けることができず、金を投げ落とすことはできませんでした。

落胆する信子たち。警察は「身代金を手に入れるまでは、犯人は人質を手にかけないはずだ」と気休めを言いますが、その後、間もなく、由利子は遺体となって発見されました。しかも、解剖の結果、由利子は身代金の受け渡し時刻より前に殺害されていたことが判明。あまりにも残酷な犯人の手口に、このニュースを知った人々は戦慄します。高森家と付き合いのあった、中古車販売業を営む寺尾俊平(垂水悟郎)とツネ(草笛光子)の夫婦も、例外ではありませんでした。いえ、むしろ近しい間柄だけに、ツネはこの事件を、他人事とは思えないほど、心を痛めていたのです。

しかし、ツネにとって全く想定外の事態が待ち受けていました。なんと、ツネの息子である浩二(金田賢一)が、この事件の容疑者として逮捕され、犯行を自供したのです。寺尾家に向けられる、世間からの非難。それでもツネは、息子が犯人だとは思えませんでした。浩二を信じ続けようとするツネでしたが、接見しても、なぜか浩二は口を閉ざします。そして担当検事(佐古雅誉)はツネに、浩二の前で彼の妻(立石凉子)の名前を出さないように釘を差しました。妻の名前を出すと、浩二が取り乱してしまうから、だそうです。ツネは腑に落ちませんでしたが、これに従うことにしました。

やがて浩二は、裁判で極刑である「死刑」を求刑されます。これには世間も納得。しかしツネの思いは変わりません。そんなとき、浩二が公判中に突如として容疑を否認。彼が初めて語った事件の全貌は、かなり具体的なものでした。もし浩二の証言が事実なら、彼は誘拐にこそ関わっていたものの、あくまで主犯グループに脅迫され、命じられるままに動いていたことになります。果たして、浩二が言うところの「リュウ」、そして「高橋」という人物は存在するのでしょうか。息子の死刑を阻止すべく、ツネは執念の調査を続けますが――。

 

というわけで、「浩二が真犯人なのか?」という点が、物語の主眼です。ただ、あらすじにも記した通り、浩二の態度には当初、特に不審な点が多かったのです。そんな彼が容疑を否認し始めたのは、やはり死刑が怖かったのでしょうか、それとも……!?

現実の事件をベースにしたドラマだけに、登場人物も多いのですが、山田信夫さんの脚本と吉川一義監督の演出によって、どのキャラクターからも「人間味」が感じられます。それゆえ、逆に浩二という人物の特殊性が浮き彫りになってくる構造で、仮に現実の事件の顛末を知っている人でも、ラストの展開はぎりぎりまで読めないのではないでしょうか。約40年前には、このような、志の高さを感じさせる2時間ドラマが少なくなかったのです。

丁寧に作られた本作の白眉は、すべての裁判が終わった後、被害者の母と容疑者の母が視線を交わすシーンでしょう。本コラムの前々回で採り上げた『女の中の風』における山岡久乃さんと加藤治子さんもそうでしたが、本作も、草笛光子さんと左幸子さんという2人の大女優の芝居が、作品にさらなる深みを与えています。表情の演技だけで、2人が苦しんできた時間の長さや、当事者同士にしか分からない複雑な心境などが、一気に伝わってくるのです。うっかりすると見逃してしまうような短いシーンですが、ぜひ、ご注目ください。

 

浩二役を繊細に演じてみせたのは、あの400勝投手・金田正一さんの息子としても知られる金田賢一さん。当時はまだ21歳でしたが、前年(1981年)に出演した映画『連合艦隊』では永島敏行さんや中井貴一さんとともに主要登場人物を好演するなど、注目を浴びていた存在でした。誘拐事件の被害者役の美池真理子さんは当時20歳。後の「池まり子」名義での活躍のほうをよく覚えているという方もいらっしゃることでしょう。この他、刑事役には天田俊明さん、山岡徹也さん。弁護士役に福岡正剛さん。裁判官役に幸田宗丸さん、野口元夫さんと、要所要所にベテランが配されています。

それでは、また次回へ。2月の「違いのわかる傑作サスペンス劇場」では本作のほか、当コラムの第8回でご紹介した『魔少年』(監督:佐藤肇/出演:松尾嘉代、名古屋章ほか)、1980年の『傑作推理劇場』より『殺意』(原作:高木彬光/監督:野田幸男/出演:坂口良子、佐分利信ほか)、1979年の『土曜ワイド劇場』より『渓流釣り殺人事件~殺意の三面峡谷~』(監督:工藤栄一/出演:緒形拳、池上季実子、大坂志郎、夏樹陽子、西田健ほか)が放送されます。これらの作品群もぜひ、ご堪能ください。

 

文/伊東叶多(Light Army)

 

<放送日時>

『極刑』

2月2日(火)20:00~22:00

2月12日(金)13:00~15:00

2月28日(日)19:00~21:00

 

『魔少年』

2月5日(金)13:00~14:00

2月15日(月)14:00~15:00

 

『殺意』

2月11日(木)14:00~15:00

2月17日(水)14:00~15:00

 

『渓流釣り殺人事件~殺意の三面峡谷~』

2月19日(金)13:00~15:00

2021年1月28日 | カテゴリー: その他
かめぽん

チューもく!! あけましておめでとうございます。 今年は明るい年にしたい!

そんなことを願いながら迎えた新年。
かめぽんの住む関東圏は緊急事態宣言が再度出されそうな雲行き。年明けだ、明るく行こうと思っていたのだが、いきなりの訃報。東映時代劇ではお馴染みの福本清三さんが亡くなられた。福本さん、我が家では先生とお呼びする←「先生、お願いします」と言われ、主人公に立ち向かうがあっさりやられてしまう、そんな先生。かめぽんは祖母や父とよく時代劇を見ていたので、個性的な風貌で、派手に斬られる先生を愛して止まなかった。探偵ナイトスクープや徹子の部屋で有名になる前から、お、今日は先生出ていますかと先生チェックをしていた方はかめぽんだけではないはず。そんな愛される斬られ役。
最近はドラマでも度々お見かけし、お元気そうだなと思っていたのだが…
斬られ役が上手なほど、立ち回りが素晴らしく見える。時代劇の制作自体が少なくなる中、日本の文化を継承してくださる方がまた一人いなくなってしまった。本当に残念だ。

202101

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未だ日々の活動が制限される新しい生活様式の中、そんな日々を慰めてくれるのはエンターテインメントだ。
どうか、鬱々とした日常を東映作品で晴らしてほしい。
今月もヒーローものからサスペンス、任侠、アニメ、時代劇など盛りだくさん。
「赤穂浪士」には吉良の付け人で福本さんもご出演されているぞ。討ち入りに向けての怒涛の展開でスカッとしてほしい。
泣いたり、笑ったり、ハラハラしたり、感動したり…
そんな作品を今年もお届けします。

今年もわくわくな東映チャンネルをよろしくお願いします。

2021年1月5日 | カテゴリー: かめぽん